こんにちは。GMOリザーブプラスです。
これまで、同シリーズの記事では、順番待ちシステムにおける「隠れ待ち時間」の実態や、予約制と順番待ち制をどう組み合わせるかといったテーマを通じて、待ち時間の見え方や運用の工夫が、医療機関全体の雰囲気や患者満足度を大きく左右することをお伝えしてきました。
コロナ以前の話ですが、開業前のクリニック様とお打合せをしていると、
「うちのほうは田舎だし、周りもみんな昔ながらの朝から名前を書く順番待ち制なんだよね。先輩たちからも、予約なんて絶対やめとけと言われるんだけど・・・」
といったお話をよく耳にしました。

そのたびに弊社は、順番待ちから時間帯予約へ移行されたクリニック様の事例を紹介し、まずは時間帯予約で開始することをお勧めしてきました。
結果として、開業から現在まで予約制で順調に運用され、経営で成功していらっしゃるクリニック様が多く存在しています。
運用を途中から切り替えるには、それなりのエネルギーが必要になるため、開業時の選択が重要になるのは間違いありません。
しかし、実際には、すでに順番待ち制で運用を定着されているクリニック様のほうが多く、
● 朝からの混雑
● 長時間の待ち時間の対する患者さんの不満
● スタッフの業務負担
● 新患の取りこぼし
などの課題に直面し、今こそ「予約制への移行」を考え始めているというケースが増えています。

本記事では、そうした状況にあるクリニックがどのように無理なく順番待ちから予約制へ移行できるかを、弊社がシステム導入支援の現場で得られた経験や実例をもとに、解説したいと思います。
1.順番待ちシステムの限界ーなんとか回せている運営の実情
順番制はたしかに便利です。
患者数の波に柔軟に対応でき、当日の変動にも強い運用です。
ですが、混雑が重なると受付がパンクし、患者さんの滞在時間は長引き、結果的に「待っている感」が強く残ってしまうこともあります。
また、以下のような課題が表面化しやすくなることもこれまでに繰り返しお伝えしてきました。
● 混雑によって、診察・説明の質の確保が難しくなる
● スタッフの業務が逼迫し、対応ミスや疲弊につながる
● 新しい診療枠(自由診療・検査など)を始めにくい
これらはすべて、「今日をなんとか回す」運営の限界を示しています。
2.予約制への移行がもたらす「時間の可視化」
予約制へ移行することで、患者さんの来院が「見える化」され、以下のような効果が生まれます。
● 混雑しやすい時間帯・空きやすい時間帯の傾向が明確になる
● スタッフが少ない日に事前に受け入れ人数を調整できる
● 自由診療や説明を丁寧に行ないたい診察をゆとりある時間帯に配置できる
● 月ごとの売上見通しや人員配置が計画的に立てられる
このように、時間を設計する運営にシフトしていくことが可能になります。
3.順番待ちから時間予約制への具体的なステップ
「順番待ちから予約制に移行したいけれど、実際にはどうやって進めればいいのか分からない」
これは、これまで多くの院長先生からお聞きしてきたお悩みのひとつです。
予約制の導入は、一見ハードルが高く感じられるかもしれません。
ですが、私たちはこれまで多くのクリニック様の運用変更に立ち会ってきました。
その中で培った現場目線のノウハウをもとに、無理なく始められるステップをご紹介したいと思います。
ステップ1 現在の診療ペースをもとに予約枠を設計する
まずは、日々の診療ペースをもとに、適切な予約枠の長さと人数を設定します。
目安としては、「同じ時間枠の中に5人以下」を推奨します。

たとえば、30分間に3~5人の診療ペースの場合は、30分間隔の時間帯でも良いですが、7~8人のペースの場合は、15分間隔に区切って同じ時間枠に最大4人、という設定にします。
1人当たりの診療時間が短い耳鼻科や保険皮膚科では、15分間に7~8人のペースであることも少なくないですが、この場合も10分間隔で最大5人までを受付する設定にすることをおすすめします。
理由は以下のとおりです。
● テンポ良く受付できる体制が整っている場合でも、同じ時間帯に7~8人が一斉に来院すると受付が混雑します。
● 「時間帯」という言葉の解釈が患者さんによって異なり、予約時間の前に来たり、時間帯ギリギリで来たり、受付側で診察順の整理がしづらくなります。
● 時間帯の間隔が短いほうが、時間内に診察してもらった場合の患者さんの待ち時間はより短く感じられます。
いずれにしろ、予約制によって、診療のペースに合った来院数に「コントロール」できる状態を目指します。
なお、弊社の予約システム「メディカル革命 by GMO」では、時間帯ごとの受け入れ人数をあとから柔軟に調整できます。
また、初診と再診で所要時間が異なる場合も、それぞれの時間枠を調整することが可能です。
ステップ2 一部の診療内容・時間帯から予約制へ
クリニックの診療のすべてを一斉に予約制にするのではなく、初めは予約制にする範囲を絞って導入し、段階的に拡充していく移行方法が現実的です。
現在、順番待ちシステムを運用されている場合、初診も再診も、予防接種で来院されるかたも血液検査のかたもすべて一律に順番で受付することが多いと思いますが、その中でも時間帯ごとに人数制限をしたほうがよい診療を先に予約制にすると良いでしょう。
順番待ちと時間帯予約の併用パターンでの着地を検討されている場合は、「順番待ち制と予約制の併用例ー患者ニーズに合わせて無理なく現場運用を行うためのヒント」を参考にしてください。
弊社の経験上、一部の診療内容から予約制を導入するパターンが一番、職員様も患者さんも受け入れやすいようです。
そして、最終的にすべての診療を予約制に移行することを目指す場合は、このフェーズで、職員様も患者さんも「予約という新しい運用」にミニマムスタ―トで慣れていきます。
また、一部の診療内容だけでなく、一部の曜日や時間帯でも予約制への移行を検討することもできます。
●平日の午前や予約制・午後のみ順番待ちを継続
●平日は予約制・土曜日の診療のみ順番待ちを継続
予約制の導入を機に「メディカル革命」をご利用いただく場合でも、現在お使いの順番待ちシステムをすぐに変更したくない場合は、予約枠は「メディカル革命」で管理し、順番待ちは既存のシステムと併用することが可能です。
もちろん、「メディカル革命」では順番待ちの枠も作成でき、時間予約と同じ画面に表示することができるため、一本化して運用することも可能です。
ステップ3 患者さんへの告知は1ヶ月~数ヶ月前に行ない、先行してLINE登録の案内を開始
予約制への移行にあたっては、事前に十分な告知期間を設けることが重要です。
特に、通院の頻度が比較的少ない診療科では、短期間で全ての患者さんに周知するのが難しいため、余裕を持ってご案内を始めることをおすすめします。
目安としては、少なくとも2ヶ月前からの告知が理想的です。これは単なる周知のためだけではなく、患者さんの通院サイクルを踏まえた「安全な移行期間」としても適切な長さとお考えください。

ある内視鏡内科クリニック様のケースでは、来院される患者さんの約8割が月1回または2ヶ月に1回の定期診察の方々でした。
そこで、このクリニック様で決めた予約制への移行日の7月1日以降にこれらの患者さんが
「今までどおり、当日行って順番を取ればいい」
と思い込んで来院され、すでに予約枠が埋まっていて受診できない…という事態を防ぐために、2ヶ月前の5月1日から毎日丁寧に案内を始めました。
具体的には、定期診察で来院された患者さんに対して、
「7月1日からは予約制になります」
「今日この場で、次回の7月の予約をお取りしますね」
「7月12日の10時にいらしてください。順番を取る必要はありませんよ」
と院内でお伝えしながら、同時にLINE登録を促しました。メディカル革命では、LINE登録がある患者さんには、予約日の前日にリマインド通知が届きます。
このような地道な取り組みを、移行日までの2ヶ月間、毎日訪れる患者さんに対してコツコツと行なっていったのです。
もちろん、
● 院内掲示
● 受付でのご案内
も同時に行いました。
さて、2ヶ月後の移行日当日の様子を想像してみてください。
定期受診の患者さんのほとんどが、事前に案内された予約時間に来院し、スムーズに診察を受けて帰宅。
院内の混乱もなく、見事に予約制へと切り替えることができました。
また、このクリニック様では、常連の30人近くの患者さんが毎朝診察開始前から順番を取るために並ばれていましたが、移行前に丁寧な説明を行ない、
「次回からは、朝並んでも順番は取れません。予約していただいた時間にお越しください」
と繰り返しご案内した結果、移行日当日に並ぶ方はお一人もいなかったとのことです。
なお、参考までに、このクリニック様にて移行準備期間の約2ヶ月間にLINEの登録をされた患者さんは約900名でした。ご導入から2年経った現在は、6000人近くの患者さんがLINE予約を活用されています。
切り替え前後のタイミングー定期受診の方の事前予約が埋まったところで、空き枠をネット公開
あらかじめ定期受診の方の事前予約を埋めておけば、そこに他の患者さんの予約がバッティングしてしまうことはありません。
準備が整った時点で、空き枠はネット公開し、WEBまたはLINEからの予約を受付すると良いでしょう。
メディカル革命では、同じ時間帯に複数名受付する設定の場合、最後の1枠が埋まるまでは受付可能であることを示す「〇」が表示され、すべて埋まった瞬間に「✖」が表示され、それ以上予約が入ることはありません。患者さんは別の時間の予約可能な枠を選択して予約をしますので、空き枠も自然に埋まります。
初めてクリニックを受診する方は、急な症状でクリニックを探していることが多いと考えると、新患獲得のチャンスでもあるので、当日も新患用の枠を複数枠、必ず用意しておく設定にすることをおすすめします。
4.「時間予約の患者さんを優先」する流れはスタッフ全員でブレずに進めることが大事
順番待ちから時間予約制への移行の大まかな段取りをご説明してきましたが、予約システムを導入する場合は、もちろん、患者さんに告知を開始する時点で、次の設定や作業も終えている状態が望ましいです。
● 予約システムの枠設計
● LINE連携設定
● 電子カルテ連携作業(患者さんのデータが予約システムに取り込まれている状態)
● 職員様向けレクチャー
この事前の告知期間は診療科や患者さんの通院サイクル、既存の予約システムがある場合は併用期間などを考慮し、クリニック様によって異なります。短い例ですと、告知から2週間後に一斉にシステムのお切り替えをされたケースもあります。
いずれにしろ、準備期間に患者さんの予約を院内でお取りすることで、システムの基本操作の練習は十分に行なっていただけます。
なお、移行初期はもちろんのこと、その後においても、スタッフの患者さんへの説明や接遇は非常に重要となります。
予約優先とは知らず、直接来院された患者さんから、「なぜあとから来た人が先に呼ばれるの?」といった声が出ることは必ずあります。
その場合は、次のように柔軟な対応をしていただければと思います。
● 当日直接来院された方に対して、予約がないので受付を断るようなことはしないこと
● あらかじめ少し多めに余裕を持った枠を用意しておき、臨機応変に合間で診察する
● 「次回からはご希望の曜日・時間でご予約が取れますよ」とお声掛けする
このような流れを意識することで、「断られた」ではなく「配慮された」と感じてもらえる対応となり、患者さんとの信頼関係を築くポイントになります。
ここで大切なのが、スタッフ全員がブレずに同じ対応をすること。つまり、チームワークが試される場面でもあります。
5.予約制への移行は院内オペレーションを見直すきっかけに
いかがでしたでしょうか?
予約制への移行は、単に運用を変えるだけではなく、院内全体のオペレーションを見直す良いきっかけにもなります。
「診療は時間で区切れるものではない」というご意見もあるかもしれません。確かに、診察が長引く場面もあるでしょう。しかし、診療以外の部分、たとえば書類の受け渡しや案内の動線などに着目すると、改善できるポイントは意外と多くあります。
スタッフ間での連携によって、受付・誘導・説明の流れを見直し、無駄な動きや待ち時間を減らす工夫をしていくことで、患者さんにとっても、職員の皆さまにとっても、よりスムーズで快適な診療体制を築いていけるはずです。
まずは「できるところから」。
スタッフの皆さまで話し合いながら、無理なく取り組める改善から始めてみてはいかがでしょうか?
次回は、多くの先生方が気にされる「予約制にしたら患者が減ってしまうのでは?」というご不安について、実例をもとにご紹介していきます。
順番待ちから時間帯予約に変更した/併用されている医療機関様の事例
●皮膚科の当日順番待ち受付から時間帯予約への移行を理想的に実現(日野皮フ科医院様 福岡県)
●小児科にうれしい機能満載!予約管理カレンダーは順番待ちと事前予約の並行管理が不可欠の小児科で本領発揮(すぎはら小児科・アレルギー科様 北海道)
● 電話応対数50%削減を実現。時間帯予約への切り替えで診察の事前準備が可能に
IVR(電話自動応答システム)でもMRI検査の予約が可能に。70歳以上の患者さんが多く利用中(高木外科内科様 愛知県)