こんにちは。GMOリザーブプラスです。
前回の記事では、順番待ちから予約制への切り替え手順について、具体例を交えてご紹介しました。
予約制は決して一足飛びの改革ではなく、段階的に、現場に無理なく取り入れることができるというイメージを少しでもお持ちいただけたのではないかと思います。
しかし、順番待ちのデメリットや予約制のメリットは理解しているものの、いざ本格的に導入を検討する段階になると、必ずつきまとうのが、
「予約制にしたら、患者が減ってしまうのではないか?」
というご不安です。
これは、多くの先生方が感じるリアルなご心配であり、その根底には、運用や患者行動に対する誤解、あるいは経験値の不足が影響していることも少なくありません。
そこで本記事では、「予約制にすると患者は減るのか?」という疑問について、現場でよく耳にする懸念を紐解きながら、実際の運用や事例をもとに考えてみたいと思います。
1.予約制にしても、受入れのペースは大きく変わらない
まず、「予約制にすると患者が減ってしまうのではないか?」という不安の背景には、
「これまでのように多くの患者さんを受け入れられなくなるのでは?」
という懸念があるケースも少なくありません。
たとえば、
「15分に7~8人など、時間で区切ると、これまでの患者数をさばけないのでは?」
という心配もそのひとつです。
ですが、実際には、変わるのは患者さんの来院のタイミングであって、診察のペースそのものではありません。
患者さんが「順番を目安に来院する」のか、「時間帯を目安に来院する」のか・・・その違いにすぎないのです。
とはいえ、最初から15分ごとに詰めた予約枠を設けるのは不安もあるかと思います。
その場合は、予約枠を少なめに設定し、当面は順番待ちと併用するなど、段階的な移行も可能です。これは以前の記事でもご紹介した通りです。
実際に運用を始めてみると、「思ったよりもオペレーションに余裕があった」と感じ、数日で受け入れ枠を拡大したクリニック様もいらっしゃいます。
特に、受付に柔軟で判断力のあるスタッフがいらっしゃる場合、現場対応は想像以上にスムーズです。
そもそも、現在も順番待ちで混雑しているクリニックは、すでに一定の患者数の確保に成功しており、開業からの年数もある程度経っていることが多いです。
そのようなクリニックでは、長年現場を支えてきた熟練スタッフの方が受付を担っていることが多く、予約制への移行にも的確に対応してくださる場面がよくあります。
ご自身のクリニックにも、「この人ならしっかり切り盛りしてくれそう」と思い浮かぶスタッフの方がいらっしゃるのではないでしょうか?
もしそうであれば、予約制への移行もきっとスムーズに進めていただけるはずです。
こうした実態を踏まえ、予約制でも従来の診療ペースが保てることをご参考にしていただければと思います。
2.予約制にすることで、時間の偏りが「可視化」されるようになる
順番待ちの場合、待合室は常に混雑しているので、患者さんが「絶え間なく」来てくれているように見えるかもしれません。
しかし実際には、混み合っていたのは限られた時間帯であり、空いていた時間も少なからず存在していたことが、予約制にして初めて明らかになることもあります。
実は、この「時間の偏り」に気づけること自体が、予約制の価値のひとつです。

たとえば、お子さま連れの方が午前中の混雑にお困りの場合でも、
「この時間帯は比較的空いていますので、あまりお待たせせずにご案内できます」
といったご案内が可能になります。
患者さん側からは、「何曜日の何時が空いているか」は見えにくいため、院内でこうした情報を丁寧にお伝えすることで、不人気とされがちな時間帯の予約枠も着実に埋めることができます。
もちろん、ホームページやWEB予約画面で、「空いている時間帯」を案内することもスムーズな受診につながる時間帯への誘導につながります。
予約制で患者来院数を維持するための施策例
● 枠が比較的埋まりにくく、空いている時間帯に、「お待たせしない時間指定枠」を別途設置し、お子さん連れの主婦層や、自由診療の患者さんを誘導する
● 仕事帰りの患者さんが集中する夕方の時間帯は枠数を増やして対応する
● Googleビジネスプロフィールなどに「平日〇時台は当日のかたでもすぐに受診可能な時間帯です」とお知らせを投稿し、ネット検索をする患者さん向けにアピールする
3.本当に患者は減ったのか?予約制へ移行したクリニック様の例から言えること
それでは本題に入ります。
「予約制にすると本当に患者数が減るのか?」という問いに対しては、明確な答えを出すのは簡単ではありません。
というのも、実は予約制に移行したことで「減ったように見える」ケースの多くが、そもそも診療キャパシティを大きく超えて患者さんを受け入れていたという背景を持っているからです。
「予約制にしたら患者が減った気がする」というお声は、弊社でも耳にすることがあります。
しかし詳しくお話を伺ってみると、順番待ち制のときは日によって診療可能な人数をはるかに上回る患者さんが詰めかけていた、というケースも少なくありません。
本来の上限を超えて患者さんを受け入れ続けた結果、スタッフの疲弊が日常となり、残業も当たり前のように発生するようになりました。さらに、待ち時間の長さに対する患者さんの不満も徐々に蓄積していきました。
そのような状況のなか、「今日は患者さんが少なかった」「明日は多そうだ」といった日々の変動に、実は最も振り回されていたのは、クリニック側だったのではないでしょうか?
予約制に移行することで、こうした不安定さに対して主導権を取り戻すことができます。
● 混み合いやすい時間・空きやすい時間の傾向が可視化される
● スタッフ配置や診療時間の調整がしやすくなる
● 空いている時間を活用して、新たな診療メニューの導入など、先を見据えた運営が可能になる
つまり、「その日どうなるか」に振り回されるのではなく、「時間をどう使うか」を自分たちで決められるようになるのです。
結果として、
● 以前よりもゆとりある診療が実現し
● スタッフの負担軽減につながり
● 患者満足度の向上も期待できる
といった、クリニック全体の質の底上げが見込まれます。
大切なのは、目先の患者数の変動に一喜一憂することではなく、今ある時間をどう整え、どう活かすか。
そこにこそ、クリニックの次の成長へのヒントがあるのではないでしょうか?
実際、予約制導入後に診療の質が向上し、「待たされない診療体験」が提供されることで、リピーターや紹介が増え、結果として「患者が減るどころか、安定的に増えていった」というクリニックも少なくありません。
さらに、弊社が把握している限り、順番待ち制で課題を抱えていたクリニック様が時間予約制または時間帯予約制に移行した後、元の順番制に戻したというケースは、今のところありません。
こうした前向きな結果がある一方で、「それでも予約制導入後に一時的に患者数が落ち込むのではないか」と不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合は、あらかじめ次のような対策を検討しておくと安心です。
● 空いている時間帯に定期通院の患者さんを誘導し、夕方などの混雑時間帯には予備枠を設ける
● 当日の直接来院者も一定数受け入れ、次回以降の予約につなげる
● 明らかに診療がオーバーする場合には、どこかで線を引くルールを持つ
● ネット予約では、新患が入りやすい設定にしておく
このように、予約枠の工夫や当日対応に柔軟性を持たせながら、中長期的な視点で運用を継続していくことで、予約制でも安定した運営と成果の両立が十分に可能です。
なお、患者数の安定という課題と併行して、多くのクリニック様が予約制に移行したあとも両立したいのが「新患を増やすこと」です。
これまで予約サイトがなく電話対応が追いつかなかった場合でも、24時間受付可能なネット予約を導入するだけで、新患が自然と増えることは十分に期待できます。
さらに、予約枠の見直しや空き時間の見える化を進めることで、無理なく新患獲得の機会を逃さない体制づくりが可能になります。
ぜひ実践していただきたいポイントです。
4.予約キャンセル率のデータから読み解く患者さんの心理
ここで、興味深い事例をご紹介します。
平日の外来診察は予約制に移行、土曜日のみ順番待ちという運用を続けて約2年が経過したクリニック様では、予約制の平日より、順番制の土曜日のほうが、当日キャンセル率が高いことがメディカル革命で出すことができるキャンセル率のデータから分かりました。
この背景には、「土曜日に順番を取ってはみたものの、次の予定に間に合いそうにないので断念した」「思ったよりも待ち時間が長くなりそうなので、途中でキャンセルした」など、患者さん側の「時間との兼ね合い」が大きく関係していると考えられます。
つまり、自由度が高いように思える順番制でも、実際には「読めない待ち時間」に対する不安や、他の予定との調整の難しさが、来院キャンセルというかたちで表れているのです。
また、別のクリニック様からは、「予約制にしてから、遅刻や無断キャンセルが減った」という声も届いています。
これは、
● デジタル予約に慣れた世代が増えている
● 逆算思考で行動する人が多くなっている
● 「待たされない医療」が当たり前になりつつある
という、現代の患者行動の変化を映し出しているのではないでしょうか?
5.時間を大切にするクリニックが選ばれる時代へ
かつては、「いつ呼ばれるか分からないけれど、それを我慢するのが当たり前」というのが、医療機関を受診する際の常識でした。
しかし今は、患者さん自身が「選ぶ側」として、クリニックの姿勢を見極める時代になっています。
「時間を大切にしてくれるかどうか」。
その視点で、クリニックを選ぶ人が確実に増えてきています。
実際に、弊社の支援現場でも、患者さんの時間を尊重し、待たせない工夫をしているクリニックほど、評価が高く、予約の定着率も良い傾向があります。
そして、そのようなクリニックでは、患者さん自身も時間を守るようになり、診療全体がスムーズに進むという好循環が生まれています。
医療においても、ビジネスと同様に「相手の時間を尊重する文化」が徐々に根付き始めているように感じます。
クリニックと患者さんがお互いの時間を尊重し合いながら、信頼関係を築いていく。そんな新しい医療の形が、今まさに広がりつつあります。
6.診療予約は、クリニックの成長とともに育てていくもの
診療の予約運用は、決して一度決めたら終わりではありません。
クリニックは日々成長し、診療内容や体制も変化していくものです。
それに伴い、受付の運用も、少しずつ柔軟に変えていく必要があります。

大切なのは、そのたびに新しいシステムに乗り換えることではなく、どんな変化にも対応できる拡張性のある仕組みを最初から選ぶこと。
そして困ったときに、気軽に相談できる相手がいることです。
弊社の予約システム「メディカル革命」では、経験豊富なカスタマーサクセスが、どのような状況やフェーズにあるクリニック様にも寄り添い、最適な運用を共に考えていきます。
それが他社には真似のできない、弊社の大きな強みです。
患者数の増減だけでなく、新患やターゲットとする年齢層の患者さんを増やすこと、あるいは患者数が頭打ちになった際に他の診療メニューを伸ばすなど、より高度な経営の舵取りが求められる局面でも、メディカル革命は力を発揮します。
弊社はそうした経営のステージに応じて、クリニック様の伴走者として全力でサポートいたします。
7.5年先を見据えて、いま動き出すという選択
予約制への移行は、それ自体がゴールではありません。
患者さんの来院傾向を見極め、必要な対策を講じながら、混雑のコントロールと収益向上の両立を目指す、そのスタート地点にすぎないのです。
「うまくいくのだろうか?」
「クレームが出たらどうしよう」
そんな不安があるときこそ、あらためて、
これは誰のための、何のための運用変更なのか?
という問いに立ち返っていただきたいと思います。
これは単なるシステム変更ではなく、クリニック全体の時間の使い方を見直し、未来を設計するための運営改革です。
患者さんの体験をより良くし、スタッフの働きやすさを高め、経営の持続性を確保していく。そうした次のステージへ進まれるクリニック様を、弊社はこれまで数多くサポートしてまいりました。
その中で培ってきた運用ノウハウは、言うなれば「現場でしか得られない秘伝のタレ」のようなものです。
前回の記事と本記事にて、そのエッセンスをお伝えさせていただきました。
5年先のクリニック経営を見据え、いま何を整えるべきか。
その一歩を踏み出す際に、弊社の経験と知見がお役に立てれば、これほど嬉しいことはありません。
記事をお読みいただき、予約システムの導入にご興味をお持ちいただきましたら、どうぞお気軽にご相談いただければ幸いです。
予約運用の先にある「時間を活かす医療体験」を、これから一緒につくり上げていければ幸いです。
順番待ちから時間帯予約に変更した/併用されている医療機関様の事例
●皮膚科の当日順番待ち受付から時間帯予約への移行を理想的に実現(日野皮フ科医院様 福岡県)
●小児科にうれしい機能満載!予約管理カレンダーは順番待ちと事前予約の並行管理が不可欠の小児科で本領発揮(すぎはら小児科・アレルギー科様 北海道)
● 電話応対数50%削減を実現。時間帯予約への切り替えで診察の事前準備が可能に
IVR(電話自動応答システム)でもMRI検査の予約が可能に。70歳以上の患者さんが多く利用中(高木外科内科様 愛知県)