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クリニック経営を前進させるデータ活用ステップ—統計データ活用③【実践編】

クリニック経営を前進させるデータ活用ステップー統計データ活用③【実践編】
メディカル革命コラム
Yuko Inoue

こんにちは。GMOリーザーブプラスです。

弊社では、2025年5月に医業経営分析ツール『AI-Board(アイボード)』をリリースしました。

この際に公開した 統計データ活用シリーズ記事(①基礎編②応用編) では、

● データ可視化の意義
● 日々の診療の中で予約データを着実に蓄積することの重要性
● 予約システムには、クリニック経営に資する多様な情報が含まれていること
● そのデータを的確に活用することで、経営改善を継続的に進められること
● そして、現状維持ではなく 「小さな気づき・改善の積み重ね」 が持続可能な経営につながること

といったポイントをお伝えしてきました。

そして今回は、その続編として「実務に直結する視点」から、AI-Board の統計データをどのように読み解き、日々の経営判断と実践に落とし込むかを解説していきます。

データはある。でも、どう活用すれば経営の流れが変わるのか?

その疑問に具体的な答えを示すのが、この【実践編】です。

はじめに:忙しさに流されてしまう毎日から未来に向かって舵を取る経営へ

本当はクリニックの未来について考えたいのに、その余裕がない。
多くの院長・経営者の方が、このようなジレンマを抱えていらっしゃいます。

しかし、日々の外来運営で活用している予約システムの「予約データ」やレセコンの「診療データ」は、実はクリニックの成長を支える重要な資源です。

こうしたデータは、未来をどうしていきたいのか、どの方向に舵を切るべきなのかを考える際に、経営判断の軸となる「基準点」を与えてくれます。

では、データを活用することで、どのように経営を改善していけるのでしょうか?

ここでは、弊社のAI-Boardをもとに、お客様へご提案している活用事例をご紹介します。

CASE1:クリニック経営のダッシュボードをつくる

まず取り組んでいただきたいのは、経営状況をひと目で把握できるダッシュボードを整えること
飛行機のパイロットが計器を常に見るように、クリニックにも毎月チェックしておきたい指標があります。

AI-Boardでは、次のような指標を日々蓄積される予約データから自動計算し、提示します。

●予約取得数(未来の需要予測)

当月に入った予約の総数。
翌月や翌々月分など先の日付の予約も含むため、未来の需要が分かる先行指標です。

●実来院数(現在の診療ボリューム)

当月に実際に来院した患者数。
予約取得数との比較から、

● キャンセルが多い
● 予約枠が不足している
● リマインドが足りていない

などの現場の問題を推測できます。

さらに診療メニュー別の詳細な分析により、どの診療が伸びているかなどの推移を追うことも大切です。

その他、Google Analyticsと連携させることで、WEBアクセス数、予約サイトへの遷移数も把握いただけます。

●継続利用数とリピーター率(患者満足度)

AI-Board 独自の定義で、リピーター率は過去5ヶ月以内に来院した患者さんが、先月も来ている割合を算出しています。

リピーター率は、クリニックの信頼度そのものです。

診療科の特性により、平均値は異なりますが、ここを高く維持できるほど経営基盤は安定しますし、低い場合は上げていく必要があることが分かります。

CASE2:保険診療のクリニック経営を守る「レッドライン」も設定する

クリニック経営には並行して守りのデータもチェックすることが欠かせません。
その一つが、患者1人あたりの平均診療単価です。

AI-Boardをご利用のあるお客様では、県内の同じ診療科の平均診療点数が1,100点(平均診療単価11,000円)の場合、「1人あたり10,000円」をレッドラインとして設定し、行政指導リスクを回避するための早期警報として運用しています。

これは保険診療を行うクリニックでは、常に確認しておきたい指標です。
必要なタイミングでダッシュボードで確認することで、設定値より単価がオーバーしている場合はすぐに見直しができますし、やや低い場合は改善策を検討できます。

CASE3:予約枠を最適化し、新規患者を取りこぼさない

「最近新規患者が減っている」と感じたとき、 多くのクリニックはネット広告などを考えるのではないかと思います。

ですが、弊社がサポートさせていただいているクリニック様では、原因は「直近の」予約枠の不足にあるケースも少なくありません。

つまり、患者さんはホームページまで来て、予約の入り口となる予約サイトまでは来ている。しかし、今日、または明日の空き枠や、一週間以内の希望時間の空きがないために離脱が起きているケースです。

この直近の空き状況のコントロールは、非常に難しいことは確かですが、新患を増やしたいという明確な目標をお持ちの場合は、細かい調整方法を提案させていただきます。
ここでは一例をお伝えします。

● 公開枠+非公開の予備枠をつくる

弊社の予約システム「メディカル革命 byGMO」では予約枠はいつでも追加で作成できますし、公開/非公開を枠ごと、メニューごとに設定することができます。
最初患者さんから見える枠、予約できる枠「公開枠」は従来どおり。
新たに院内のスタッフだけが操作できる「非公開の予備枠」を用意することで・・・

● 埋まってしまっている予約を予備枠に退避させることで公開枠を状況に応じて開けやすくなる
● 電話の「調整作業」が減る
● 今まで逃してしまっていた新規患者を受け入れやすくなる

という、コントロールが可能になります。

患者さんは、急に体調不良になれば、「今日診てもらえる」クリニックを探します。
クリニックには受け入れの限界があります。
しかし、ほんの少しだけ調整できる場合に、このネット公開枠を少しだけ空けることで、無理のない範囲で状況に応じて「新患を受け入れる」という対策ができます。

CASE4:攻めの戦略へ——高単価診療を軸にしたスケジュール設計

ここからは「守り」から「攻め」へのシフトです。

従来は、空いた時間に自費診療を入れる後追い型や、一般診療で枠が埋まり自費診療が入りづらい成り行き型が一般的でした。

しかしこれからは、自費診療を先に予約枠として確保し、収益の核を先に押さえる戦略が有効です。

メディカル革命では、高単価の診療メニューを優先的に公開することで、クリニックの収益の柱を確実に構築するということが可能です。

その後、残った空き時間を活用して一般診療の枠を埋めることで、限られた診療リソースを最大限活用しつつ、収益の安定化と外来運営の効率化を同時に実現できます。

メディカル革命で実現する積極的な成長モデル

1. 30日以上先の自費診療枠を先行して公開する
2. その枠を先に予約してもらい、収益の土台を構築する
3. その周囲に保険診療の枠を設計する
4. スケジュール全体を予測可能な形に整備する

壺に石を入れる例えでいうと、まずは容量を確保するために、大きな石(自費診療など高単価の予約)を最初に入れて、収益の核となる部分を押さえます。

その上で、石の間に中くらいの石や小石(保険診療)を入れていけば、隙間を埋めるように柔軟に枠を配置できます。

最後に、砂にあたる細かな調整(スケジュール全体の最適化)を行うことで、限られた時間枠を最大限に活かした運用が可能になります。

これにより、 「稼働の安定」+「収益の最大化」を同時に実現できます。
イメージいただけましたでしょうか?

CASE5:受け入れ体制が整ったら、集患アクションはシンプルでいい

予約枠があるからこそ、安心して集患ができます。

● 既存の患者さんへのLINEメッセージ
● Googleビジネスプロフィールで「気になるこの症状は早めに受診」などのメッセージを発信
● 新規患者が来たタイミングで「確実に予約枠がある」状態にする

受け入れ体制が整っているだけで 同じ施策でも成果が大きく変わります。

まとめ:データは、クリニック経営の「未来設計図」になる

日々の診療に追われていると、予約や来院データを「経営の視点」で見る余裕はなかなかありません。

しかし、そこに蓄積された情報は、課題の発見から成長戦略の立案までを支える貴重な手がかりです。

まずは、予約データとその詳細を可視化することから始めましょう。

データを整理し俯瞰することで、クリニックの将来の方向性や改善の優先順位が、自然と見えてきます。

いかがでしたでしょうか?

貴院の患者さんは、貴院の診療を選んだ理由があります。その患者さんに最適な医療を届けるために、データを活用し、クリニックの未来像を描いてみてください。

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目次

  1. はじめに:忙しさに流されてしまう毎日から未来に向かって舵を取る経営へ
  2. CASE1:クリニック経営のダッシュボードをつくる
    1. ●予約取得数(未来の需要予測)
    2. ●実来院数(現在の診療ボリューム)
    3. ●継続利用数とリピーター率(患者満足度)
  3. CASE2:保険診療のクリニック経営を守る「レッドライン」も設定する
  4. CASE3:予約枠を最適化し、新規患者を取りこぼさない
    1. ● 公開枠+非公開の予備枠をつくる
  5. CASE4:攻めの戦略へ——高単価診療を軸にしたスケジュール設計
    1. メディカル革命で実現する積極的な成長モデル
  6. CASE5:受け入れ体制が整ったら、集患アクションはシンプルでいい
  7. まとめ:データは、クリニック経営の「未来設計図」になる

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