―― 先生は長く形成外科としての実績を積まれていますが、形成外科医を目指されたきっかけをお聞かせください
私が医師になった当時は現在よりも形成外科医が少ない時代でした。
学生実習をおこなっていた頃は形成外科という科目の理解が漠然としていましたが、実際に医師になり形成外科の手術を目の当たりにした際に衝撃を受け、これを自分の専門にできるのはとても面白いと感じました。
皮膚表面を扱うため、結果が目に見えて分かる点も魅力でした。先天異常、頭頸部再建や乳房再建など、様々な診療科と連携し、外科系の「最後の砦」のような立場であることに、形成外科医としての魅力とやりがいを感じました。

20数年間形成外科をしっかりやってきた自身の経験を土台に、患者が皮膚の悩みで来院した際に、治療までワンストップで行える体制を目指しました
―― 先生はクリニック開業にあたり、皮膚科から美容外科まで、保険診療から自由診療までシームレスに患者さんからの相談を受けられる点をクリニック理念の一つとされていますね
形成外科医が開業する際は、「形成外科」として単科で開業するクリニックは極めて珍しく、多くの場合皮膚科・形成外科、もしくは美容外科という形で開業する方が多いと思います。
私の場合は開業時が45歳で、20数年形成外科をしっかりやってきたベースがありますので、ワンストップで診断から手術までできるという点で、皮膚科と形成外科間のシームレスな橋渡しが可能です。
また、ニキビのお悩みで若い患者さんが多く来院されますが、ニキビに関しては保険診療の薬を処方します。しかし、ニキビ跡に関するお悩みについては保険診療でできることはほとんどありません。
そうしたお悩みを持つ方には、院内でスムーズに自由診療をご案内できるようにしております。つまり、皮膚に関するお悩みに対して「うちではできません」とお伝えすることがほとんどないようなクリニック作りを目指して開業しました。

競合クリニックが少なく、自身の専門性を差別化できると考え、開業時にしっかりと投資しても十分に勝機はあると判断しました
―― 福井県で形成外科の競合クリニックさんは本当に少ないですね
私と現在の教授である上司が2013年に福井大学に形成外科を立ち上げに来るまで、福井で形成外科医を育成するシステムがありませんでした。福井で新たに形成外科医が生まれる土壌がなかったため、競合クリニックが極めて少ないのです。
クリニックを開業する際、私の専門性と希少性をもって差別化を図れると確信し、開業を決めました。
私は大阪出身なのですが、大阪に戻って開業する選択肢よりも、私の知識と経験を福井の方々に提供し、喜んでいただきたいと考え、もう福井に骨を埋めようと決意しました。
―― 開業時から9名ほどのスタッフ体制で、高性能な医療機器も導入されての開業という、いわゆるミニマム開業とは全く逆の戦略で開業されていますね
ミニマム開業は確かにローリスクであり、都会のようにビルテナントの賃料が高い環境であれば、ミニマム開業で小さく始めて順調に拡大していくというのは非常に重要な視点です。
一方、福井で開業することを考えると、この地方だからこそ40〜50台ほどの大型駐車場も併設可能です。そのような状況下でミニマム開業をするのは、逆に言えば非常に勿体なく、チャンスを失っていると考えました。建物も土地も広く取れ、せっかくそのキャパシティがあるのだから、開業時にしっかりと投資して最初から大きくしても十分に勝機はあると判断し、様々な機器の導入や、多くのスタッフを育成する戦略を取りました。
また、一昔前であれば、住宅地の中の開業立地が好まれる傾向にあったかと思います。
しかし大通り沿いの目立つ場所に建物があれば、「こんなところにこんなクリニックがあるんだ」と目に留まり、それだけでも集患効果があると考えました。
システム選定はコストや導入のしやすさからクラウド型を重視、自由診療を円滑に回すために高度なカスタマイズ機能を重視しました
―― メディカル革命を選定された経緯をお聞かせください
クリニック開業前のシステム選定では、まず電子カルテを選定し、それに連携させるという視点で診療予約システムを選定します。
まずは私のコンセプトである保険診療をしっかり行え、自由診療も一元管理できる電子カルテを選びました。やはり保険診療は様々な入力補助や分析機能、そしてレセプト業務が非常に重要です。そこをしっかりこなせることを重視しました。
また、メンテナンス性や導入費用を考慮すると、時代的にはクラウド型だと考えました。
当時選定した電子カルテにも予約システムは内蔵されていましたが、そのシステムでは自由診療を効率的に運用することが難しいと感じました。スタッフ・部屋・機械を連携させて予約する必要があるため、人が手作業で管理していてはトラブルの原因となりますし、スタッフの手を煩わせることになります。
そうした効率的運用がスムーズにでき、しかも患者さんご自身で予約が取りやすいという点で、メディカル革命は非常に魅力的だと感じました。
福井のクリニックは、朝早くから並ぶ順番待ち制のところがほとんどです。そのような中で、当院は差別化の一つとして、時間帯予約制とすることで予約した時間にクリニックに行けば良いとなり、行動予定も立てやすくなります。
時間帯予約の仕組みを理解していただくために、次の予約を取られる際に「10時から10時半の枠ですよ」と明確にお伝えするようにしています。
お伝えすることで患者さんはすぐに慣れてくださいますので、スタッフにはしっかり周知してもらっています。

システムが自動的に「皮膚科は何分、形成外科は何分」と、同じ30分の中で振り分けてくれますので、時間通りに診療が進むことが多いです
―― QRコードによるスマートチェックインや呼出しディスプレイでのご案内など、スムーズな院内オペレーションを構築されていますね
スマートチェックインはスマ-トフォンをかざしていただければ受付が完了するので、非常に便利で効率的です。
また、再診の方には「前回からどうですか」とWEB問診で予約時にヒヤリングして、電子カルテに情報が連携されるように設定しておりますので、受付や問診にかける時間はかなり短縮されているかと思います。
呼び出しディスプレイは、診察室側からお呼び出しできて、患者さんが診察室の前まで来られますので、人手を要さず非常に重宝しております。
―― 予約機能について、便利だと感じていただいている点はありますか
例えば、施術内容によっては麻酔が必要で、約30分間の麻酔時間が必要となります。
当初は麻酔のための枠を独立して設けていなかったため、麻酔時間については口頭で30分前に来院いただくよう案内していました。
しかし、前日の連絡で麻酔時間のご案内が抜け落ち、施術時間にしか来院されないという問題が時々発生していました。そのような事態を回避するため、麻酔時間枠を別途作成しました。
患者さんは自動的に麻酔時間を含めた時間に来院されるようになり、うまく運用できるようになっています。
―― 運用の試行錯誤をしっかりされていますね。初診枠を6分から5分に短縮したというお話も伺ったかと思いますが、予約を柔軟に調整できる点がメディカル革命のメリットの一つでもあります。どのようなご判断でそのように変更されたのでしょうか
開業当初は全てが新患という状態なので、住所登録や初診向けの問診を取る必要があります。
そのため時間がかかるだろうという予測から、初診枠を6分に設定していました。
その後再診患者が徐々に増え、スタッフも私も慣れてきて余裕が出てきたところで、皮膚科の初診枠を6分から5分に短縮しました。
しかし、形成外科に関しては、診療内容の特性上ある程度時間がかかるため、開業時からそのままの時間枠で運用しています。システムが自動的に「皮膚科は何分、形成外科は何分」と、同じ30分の中で振り分けてくれますので、予約時間に大幅に遅れが出ることなく、診療がスムーズに進んでいます。
―― LINEの運用についてお聞かせください。貴院のLINE友だち数は6,000人以上と、非常に多いですね。登録を促すための工夫などはありますか。
これは正直なところ、LINEの友だち登録しないと予約が取れないシステムになっているためです。
予約なしで来院される方には、スタッフから「このように予約を取っていただければ、LINEで簡単にどの時間でも予約できますよ」というご案内させていただくようにしております。
―― スタッフの方が患者さんへの案内を徹底していることもLINE友だち数増加に貢献していますね。貴院の予約数をメディカル革命で拝見すると、右肩上がりに予約が増えている中で、特に今年の3月以降の予約数が急激に増えているように見受けられます。何か運用の変化等がありましたか?
運用自体は正直変わっていません。
冬季は雪国という事もあって予約の減少が見られますが、確かに3月以降からは急激に増えてきていると感じます。初診・再診含め、来院される方が増えています。
来院された患者さんから「いいと聞いて来た」とお聞きすることが増えてきています。開業してまだ1年4ヶ月ほどですが、やはり年月が経つことで、こうした口コミが増えてきているのかなと思います。
当院の患者さんの7~8割が保険診療を受けられる方です。
自由診療に関してはInstagram広告を出しているのと、LINEの定期配信を行っています。
あまり頻繁に送ることはなく、しつこくなく、クリニックのことを忘れない頃合いを見て配信しています。前回の配信は、ワクチンに公的補助が出るようなタイミングだったような気がします。
LINEの友だち6,000人(※インタビュー時点の数)は間違いなく当院につながる6,000人です。何かあった時にはLINEに配信すれば必ず届く、当院の近隣の方に届くという点で、とても重要なことだと考えております。

―― Googleマップからの予約が取れる「オンラインマップ集患」オプションについてご感想をお聞かせください。
患者さんが近隣のクリニックをWEBで調べている時に、「ここから予約が取れるんだ」と気づく方もいらっしゃると思います。
特にWEB検索に慣れた層をターゲットにしているクリニックですので、多くの予約窓口を用意しているというのは、患者さんの利便性という意味では非常に良いと思います。
開業初月から黒字化を達成し、半年で売上が2000万円弱を達成
―― 峯岸先生には2025年2月に弊社主催のオンラインセミナーにご登壇いただき、開業初月からの黒字化達成、半年で売り上げ2,000万円弱まで到達されたお話を伺いました。
▼ 是非、峯岸先生ご登壇のセミナーアーカイブ配信をご視聴ください(近日公開予定)
「クリニック開業から最短黒字化の極意」
―― スタッフの方々の残業時間や業務において、メディカル革命の貢献はございますか
メディカル革命によって時間帯予約制がうまく回っていますし、急患は対応しきれる程度の数です。
そのため、お昼の休憩時間の確保や診療終了後の帰宅時間において、残業はほとんど発生しません。18時の診察終了後18時10分くらいには帰宅が可能ですし、朝は始業時間の8時半少し前に出勤すれば問題ありません。
近隣のクリニックを見ていると、朝8時頃からクリニックの前で待っている患者さんがいらっしゃいます。待っている人がいると「早く開けないといけない」と感じ、そうなるとスタッフの始業時間も「早番」などを作って早く来たりといったことが発生すると思いますが、当院は始業時間少し前に来て、終業時間に帰っていくというシステムがしっかり構築できていると思います。
業務については、電子カルテ連携の患者登録や事前のWEB問診は非常に利便性があり、スタッフの業務は効率化されていると思います。
また、業務終了時の予約状況に少し空きがあるとしても、翌日朝には予約がほとんど埋まっている、ということもあります。
それは電話受付だけでは成し遂げられないことですし、受付スタッフの業務負担軽減にもなっています。もちろん患者さんにとっても、とても便利で良い点だと思います。
次の段階として、1日予約が埋まっていて取れないという問題に対応していかなければならない時期がそろそろ来るだろうと考えています。
―― 保険診療の患者さんが自由診療へ移行されるパターンは多いのでしょうか
院内誘導ができるという点が、保険診療と自由診療を行うクリニックの圧倒的な優位性です。
当院の場合、多くの患者さんに保険診療で来院していただいているという大きな強みがありますので、そこから院内誘導につなげていくという戦略があります。
例えば、WEB問診の項目の一番下に「美容医療に興味がありますか」「脱毛に興味がありますか」という質問を設け、そこにチェックをつけた方には、当院で行っている美容医療や脱毛についてのご案内を必ずお渡しするようにしています。
―― WEB問診でニーズをキャッチされているのですね
全ての患者さんにアップセルや押し売りをするようなことは絶対にしませんが、興味を持っていただいた方には、まず日焼け止めなど、肌の状況に合わせて基礎的なケアから始めることをお勧めします。日焼け止めなどの物販から、さらに美容施術に興味がある方には美容のカウンセリングにご案内するなど、導線作りは工夫しています。
将来的には、「皮膚の総合デパート」「皮膚の総合商社」のような、ほとんどの皮膚系統のことは「みねぎし皮ふ科形成外科に行けば大丈夫」というクリニック作りをしたいです
―― 今後のクリニックの展望についてお聞かせください
皮膚科から形成外科、美容皮膚科、美容外科と横断的に診療を行っておりますが、体は一つしかありませんので、できることも限られています。
長期的に見た場合は私だけではなく、皮膚科専門医や形成外科医などの医師が複数名在籍する体制で診療することでより特色を出し、「皮膚のことならあそこに行けば診てもらえる」という状況を作り上げていけると思います。
「今後、予約が取れなくなる問題」については、嬉しい悲鳴ではありますが、特に土曜日はその傾向が強くなってきています。医師を拡充することによって、さらに多くの患者さんに対応できるような診療体制を、早急に構築していかなければと考えております。
将来的には、「皮膚の総合デパート」「皮膚の総合商社」のような、よほどの重篤な症状は別として、ほとんどの皮膚系統のことは「みねぎし皮ふ科形成外科に行けば大丈夫」というようなクリニック作りをしたいです。
他には、当院は若い女性の患者さんが多いということもあり、「あと少しで結婚式なんです」といった患者さんがいらっしゃることがあります。そうした方々に大変満足していただいて、その後も継続して通っていただける様子を見ていると嬉しいですね。
皮膚のかゆみや蕁麻疹のようにゴールが見えにくい疾患もある中で、結婚式のように「ここだ」という明確なゴールがある方を診た時は、結果が分かりやすいですし、喜びも非常に伝わってきますので私も嬉しいです。そういったところは、診療をしていて患者さんのためになっているなと感じる瞬間です。
―― ありがとうございます。先生のお人柄で、今20代・30代の女性が40代・50代と長く通われるクリニックになるのではないかと、長い繁栄を予感いたしました。
先生、本日はご多用のところ誠にありがとうございました!
▼ みねぎし皮ふ科形成外科 WEBサイト
https://minegishi-hifukeisei.jp/