こんにちは。GMOリザーブプラスです。
メディカル革命コラムではこれまで、クリニックの予約・経営・集患 をテーマに、さまざまな切り口で記事をお届けしてきました。
その中で、2025年、もっとも多く読まれた記事が、
『予約システムお悩み相談①
順番待ちシステムで患者離れの未来がやって来る?『隠れ待ち時間』に注意』
だったことは、私たちにとって非常に示唆的でした。
これは単に、「順番待ちは大変ですよね」という共感を集めたからではありません。
多くの医療機関がすでに、
● 順番待ちという仕組みに限界を感じている
● 患者さんの反応が以前と変わってきている
● 今の運用を、この先も続けてよいのか不安を感じている
という 違和感を抱え始めている ことの表れだと受け止めています。
1.「待つのが当たり前」の時代は、静かに終わり始めている
かつて医療機関では、「多少待つのは仕方がない」「病院とはそういうものだ」という暗黙の了解がありました。
しかし今、患者さんの行動は明らかに変わっています。
● インターネットで医療機関を探す
● 口コミや体験談を比較する
● 予約のしやすさ、通いやすさを重視する
そして何より、
「通院する場合、自分の生活の中に無理なくそのスケジュールを組み込めるかどうか」
という視点で、医療機関を選ぶようになっています。
これは、弊社が実施した患者の医院選びと予約行動に関する調査(2024年11月)における『医院を選ぶ際に重要視している点』の結果からも読み取れる変化です。
医療の質や医師の人柄といった基本的な要素に加え、「待ち時間が短いこと」「通院の予定が立てやすいこと」 を重視する患者さんが増えていることを示していると思われます。
誰もがスマートフォンを持ち、目的地までの移動時間を調べ、家を出る時間を逆算することが当たり前になった今、患者さんの「時間感覚」が変わった というのは、ごく自然な社会の変化と言えるでしょう。
2.まず認識すべきことー順番待ちは「すでに選ばれにくい仕組み」になっている
順番待ちは、一見すると公平で、分かりやすい仕組みです。
実際、不特定多数の方が予約なしで訪れる郵便局や役所の窓口では、今も番号発券機と呼び出しシステムが非常に合理的に機能しています。
そこでは、
● 来訪者の多くが一度きり、または低頻度の利用者である
● 年齢や状況、目的を細かく考慮する必要がない
● 「同じルールで、順番に処理する」こと自体が前提になっている
という運営モデルが十分に成り立つのです。
しかし、医療機関ではどうでしょうか?
● 定期診察の患者さん
● 小さなお子さんを連れた方
● 遠方に住んでいて、移動に時間がかかる方
● 急な症状で不安を抱えている方
目的も状況も異なる患者さんが同時に存在しています。
こうした環境で、 「全員を同じルールで、順番に処理する」 という考え方そのものに、無理が生じ始めているのではないでしょうか?

2-1.順番待ちが生む本当の問題は「長さ」ではなく「不確実性」
順番待ちの最大の問題は、単に待ち時間が長くなることではありません。
本質的な問題は、
「いつ呼ばれるか分からない」という不確実性
です。
私たちは、順番を取ってから診察に呼ばれるまでのこの不透明な待ち時間を、「隠れ待ち時間」と呼んでいます。
この「隠れ待ち時間」が、強いストレス、不満の蓄積、「次は別のクリニックにしよう」という行動につながっていきます。
どれほど丁寧で、質の高い医療を提供していても、患者さんがそれを実感する時間は、診察中のほんの数分です。
それに対して、「いつ呼ばれるか分からない時間」が長ければ長いほど、ストレスは増大し、クリニック全体の印象は大きく損なわれてしまいます。

2-2.数字で考える「順番待ち」が生むストレスの総量
ここで、少し定量的に考えてみましょう。
あるクリニックで、 午前中に80人が順番待ちを取るケースを想定します。
順番待ちシステムでは、 朝の受付開始前から待機し、 ようやく順番を取れても、
● 10番目くらいまでは比較的スムーズ
● 11番目以降は、平日でも平均90分待ち
という状況が珍しくありません。(※過去のコラム記事でも取り上げたクリニックの例)
仮に、
● 午前中に80人が順番を取得
● そのうち70人が、それぞれ平均90分の「隠れ待ち時間」を抱える
とすると、
70人 × 90分 = 6,300分
もの待ち時間によるストレス時間が、 たった半日の診療で生み出されていることになります。
一方で、同じく午前中に80人を診療するとして、
● 時間帯予約を活用し
● 1人あたりの待ち時間を平均15分以内に抑えられた場合
患者さん1人ひとりが抱えるストレスの時間の合計は、
80人 × 15分 = 1,200分
で済みます。
つまり、順番待ちと時間帯予約では、
患者さん1人が感じるストレス時間を合計した「総ストレス時間」が、5分の1以下になる
ということです。

2-3.「公平」に見える仕組みが、実は不満を増幅させている
このように、順番待ちは実際には、
● 早く来られる人が有利
● 待てる人が報われる
● 生活に制約がある人ほど不利
という課題を内包しています。

これは、 医療機関が本来担うべき「患者さんの緊張を和らげる役割」とは、必ずしも相性が良い仕組みとは言えません。
だからこそ今、順番待ちは「当たり前の仕組み」ではなく、「選ばれにくい仕組み」へと、位置づけが変わり始めているのです。
3.予約システム選びで陥りやすい、最初の落とし穴 ― 今の運用を前提にしてしまうこと
では、実際に「予約システムを導入しよう」と考えたとき、多くの医療機関は何を基準に選び始めるのでしょうか?
よく見られるのが、
● 今の順番待ち運用を、そのままシステム化したい
● 人がやっている受付業務を、機械に置き換えたい
という発想です。
これは決して間違いではありません。順番待ちをシステム化すること自体は、現場改善の一歩であり、 実際に一定の効果を生みます。
ただし、ここで注意したいのは、
「今の運用を前提にした選定」は、思考を現在に縛ってしまう
という点です。
予約システムは、「今のやり方をそのままに業務を楽にする道具」でもありますが、 同時に、
● 将来、どんな診療体制をつくりたいのか
● どんな患者さんに、どう通ってもらいたいのか
● どこに時間と人手を使う医療機関でありたいのか
を形にするための土台でもあります。
今の運用をそのまま写し取ることは、 先ほど述べたような不満をそのままにしてしまい、将来の選択肢を自ら狭めてしまう可能性があります。
だからこそ、 順番待ちのシステム化は「通過点」として捉え、 最終ゴールにしないという視点が重要 ではないかと私たちは考えます。
4.次の落とし穴ー「受付効率化」をゴールにしてしまうこと
もうひとつ、非常によく見られるのが、受付効率化そのものをゴールにしてしまうケースです。例えば、
● 受付が大変だから
● 電話が鳴り止まないから
● ペーパーレスにしたいから
● 電子カルテと連携できるから
こうした理由で予約システムを検討することは、ごく自然な流れです。
実際、
1.Web予約
2.Web問診
3.カルテ連携
がシームレスにつながる仕組みは、一見すると完璧で、「これぞ求めていたもの」と思いがちです。
しかし、問題はここからです。
多くのシステムは、受付業務をスムーズにするところまでの役割にとどまり、その先はクリニック任せとなるため、改善もそこで止まってしまいます。
その先にある、
● 患者さんが無理なく通える診療の流れをつくりたい
● 患者さんが希望する時間帯で予約が取りやすい体制にしたい
● 患者さんのニーズに合わせた新しい診療メニューを始めたい
● 専門性がきちんと伝わる医院として選ばれたい
● 人・時間・設備を活かし、患者さん一人ひとりに向き合える体制をつくりたい
● 長く安心して通ってもらえる持続的な診療体制を整えたい
といった経営フェーズの変化に、 十分対応できないケースも少なくありません。
受付業務は確かに重要ですが、それはあくまで予約システム導入の「入口」にすぎません。
予約システムを院内の受付効率化だけで評価してしまうと、変化の手前で天井にぶつかってしまうことになりかねないのです。

5.本当に見るべきは「将来の集患と成長に耐えられるか」
予約システムは、単なる受付ツールではありません。
患者さんから見れば、
● そのクリニックと出会う最初の接点
● 通い続けるかどうかを判断する体験の一部
です。
だからこそ、選ぶ際には、
● Webからの予約導線は分かりやすいか
● 患者さんの行動を想定した設計になっているか
● 規模拡大や診療内容の変化に柔軟に対応できるか
● 予約枠の調整・最適化がしやすいか
といった視点もぜひ持つことをお勧めしたいです。
「便利そう」「全部できそう」といった聞こえの良いセールストークだけで判断すると、予約システムの本質的な価値を感じることができず、数年後に別の予約システムを探すことになり、切り替えにかかる時間・労力・コストを改めて負担することにもなりかねません。
6.最後にー予約システムは、経営判断そのもの
予約システムの選定は、単なるITツール選びではありません。
● どんな患者さんに来てほしいのか
● どんな通院体験を提供したいのか
● どのように成長していきたいのか
という 経営判断そのもの です。
その軸が定まって初めて、
● 投資に対するリターン(ROI)
● コストの妥当性
を考える意味が出てきます。
次回以降の記事では、実際に、どのように予約を設計すればよいのか、限られたリソースをどう活かし、成長と患者体験を両立させていくのか、より具体的な視点で掘り下げていく予定です。
本記事が、これから予約システムを導入・見直そうとしている先生方にとって、自院に合った予約設計を考えるための「判断軸」になりましたら幸いです。