こんにちは。GMOリザーブプラスです。
前回の記事では、
● 「順番待ち」が選ばれにくくなっていること
● 予約システム選びで陥りやすい落とし穴
● 受付効率化をゴールにしてしまう危うさ
について整理しました。
ここで、少し立ち止まって考えてみたいことがあります。
予約システムを検討するとき、最初に比較されるのは、たいてい次の点です。
● 初期費用はいくらか
● ランニングコストはいくらか
● 電話がどれくらい減るか
これは、非常に自然で、もっともな視点なのですが、この比較の段階で、無意識のうちに ある前提 が置かれています。
「予約は、受付業務の一部である」
この前提に立つ限り、予約システムは バックヤードの効率化ツール にとどまります。
しかし本来、「予約」は単なる受付作業ではありません。
● 患者さんの行動
● 来院動線
● 院内オペレーション
● そして経営状況そのもの
にまで影響を及ぼします。
それを「受付業務の話」に閉じてしまうことで、予約システムは本来持っている力を発揮できなくなります。
この前提を私たちはいったん外し、システムを考え直す必要があると考えています。
では実際に、これから予約システムを導入・見直すクリニックは、何を軸に、どのように設計していけばよいのでしょうか?
本記事では、「経営」「現場運用」「患者体験」という3つの視点を統合しながら、予約システムを経営に活かす考え方を具体的に解説します。
1.医療の予約は「順番管理」から「時間設計」へ
弊社では、これからの医療予約は
「順番をさばく」ものから、「時間を設計する」ものへと、少しずつ役割が変わっていく
と考えています。
これまで多くの医療機関では、
● 受付した順にご案内する
● 来院順をできるだけスムーズに回す
といった「順番管理」を前提とした運用が主流でした。
この考え方自体は、長く医療現場を支えてきた方法でもあります。
一方で、現場を丁寧に見ていくと、医療の現実はとても複雑です。
● 診療内容によって、必要な時間は大きく異なる
● 患者さんの背景や症状によって、対応の重さも変わる
● 医師・看護師・検査機器・診察室など、使われるリソースが違う
こうした異なる診療が、同じ時間帯に並行して進んでいます。
それにもかかわらず、
● すべての患者さんを一列に並べる
● 先着順で同じように処理する
という運用は、クリニックが受け身の診療体制となり、そのしわ寄せが患者さんやスタッフによっているのも事実です。
そこで私たちが重要だと考えているのが、 「誰を、いつ、どの体制で診るのか」を、あらかじめ整理できる予約設計 です。
たとえば、
● この診療は、比較的短時間で終わる
● この時間帯は、特定の医師・スタッフが対応できる
● この患者層には、余裕を持った枠が必要
といったことを前提に、
● どの患者さんに
● どの時間帯で
● どのリソースを使うのか
を設計していく考え方です。
これは、単に効率を上げるための話ではありません。
医療の質を保ち、スタッフの負担を抑え、クリニックとして持続的に運営していくための土台 だと私たちは捉えています。

2.予約枠は「時間」ではなく「経営リソースの集合体」
予約枠という言葉から、「○時〜○時の30分枠」といった時間の箱を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、実際の医療現場で機能している予約枠は、単なる時間ではなく、複数の経営リソースの組み合わせによって成り立っています。
たとえば、
● 医師
● 看護師・受付スタッフ
● 診察室・処置室
● 医療機器・検査設備
といった要素です。

具体的には、
● 発熱外来には隔離室が必要
● 土曜日は医師2人体制なので枠を増やしたい
● 心療内科では担当医以外を選ばせたくない
● 機器は1台しかないが処置室は複数ある
といったケースが日常的に発生します。
これらをどのように組み合わせ、どの時間帯に配置するかは、単なる受付業務ではなく、経営設計そのものだと私たちは考えています。
言い換えれば、予約管理と経営管理は、実は非常に近い領域を見ているのです。
3.再診・定期診察こそ、予約制設計の出発点
開業から数年経過しているクリニックにおいて、
● 再診の患者さんが全体の多くを占め、
● その中に、定期的に通院されている患者さんが一定数いらっしゃる
という患者構成ではないでしょうか?
ここで私たちが大切だと考えているのは、 定期的に診察を受ける患者さんや、リピートしてくれる患者さんこそ、待たずに受診できる仕組みを優先して整える という視点です。
たとえば、
● 予約時間に近いタイミングで診察を受けられる(毎回並ばなくて済む)
● LINEなどでリマインドが届く
● マイページから予約の確認・変更ができる
こうした体験は、
● 患者さんの通院に伴うストレスを減らし
● 来院の予測性を高め
● 結果として、院内オペレーションを安定させます
そしてそれは、そのまま 安定した患者基盤・経営基盤につながっていきます。
実は、予約制への移行は、必ずしも「新患を増やすこと」から始める必要はありません。
まずは、既存の定期診察の患者さんの予約を丁寧に整えること。
そこを出発点とする考え方も、十分に現実的で取り組みやすいということをお伝えしておきます。

4.集患は「安定した予約基盤」の上で考える
定期診察を中心に予約基盤が整ってくると、次に見えてくるのが新患の受け入れ設計です。
たとえば、
● 定期診察の予約を、あらかじめ最大1か月分確保する
● そのうえで、どの時間帯に余力があるかを把握する
● 急患のための当日枠や前日開放枠を設計する
● 初診の種類(専門外来・発熱・一般など)を分けて考える
こうした目的別の予約枠設計が可能になります。
これは、
● 無理に診療を詰め込まず
● かといって、空き時間を放置しない
という、現場と経営のバランスを取る設計です。
予約管理が整理されてくると、どの診療がどれくらいニーズがあるのか、といったことも、少しずつ見えるようになってきます。
5. 予約状況は経営の状態を映し出す鏡
経営の視点で見ると、予約システムは クリニックの状態を正直に映し出す鏡のような存在です。
たとえば、
● 予約が埋まらない
→ 集患施策を見直す必要があるかもしれない → 患者さんのリピートしやすい仕組みを検討
● 患者数は多いが、収益が上がらない
→ 枠やリソース配分が適切か再検討が必要 → 単価が高い診療にリソースを配置できるか検討
● 現場が常に疲弊している
→ 設計と現実が合っていない可能性がある→システムは入れたが、オペレーションが改善していない。
こうしたサインを放置したままでは、本質的な経営改善にはつながりません。
だからこそ、
● 時間の最適化
● 予約枠の最適化
● 人と設備の最適化
を、可視化できる仕組みが重要になります。
6.予約は、経営と医療の未来を映す仕組み ―「導入して終わり」にしないために
私たちは、これまで2,500以上のクリニックの予約運用を見てきました。
その中で、強く感じていることがあります。
それは、予約システムは「導入して終わり」のツールではない ということです。

実際の医療現場では、
● 患者層が少しずつ変わっていく
● 診療内容や注力したい分野が変化する
● スタッフ体制や働き方が見直される
● 競合となりえるクリニックが現れる
といった変化が、時間とともに必ず起こります。
予約設計が、その変化に追いつかないままでいると、
● 現場の負担が増え
● 患者体験が損なわれ
● 経営判断も感覚頼りになってしまう
という状態に陥りがちです。
だからこそ私たちは、 予約システムを単なる受付ツールではなく、
● 医療の質
● スタッフの働き方
● 患者体験
● 経営の持続性
これらすべてを映し出す「経営の鏡」として捉えることが重要だと考えています。
運用を続けながら、
● データを見て
● 設計を見直し
● 現場とすり合わせ、改善を重ねる
このサイクルが回り始めて初めて、予約システムは経営のパートナーとして機能します。
医療の予約は、もはや「診察の順番を決めるための仕組み」ではありません。
● どんな患者さんに来てほしいのか
● どんな通院体験を提供したいのか
● どのように医療を続けていきたいのか
● その意思が、最も正直に表れる場所です。
本記事が、予約システムを「選ぶ」だけでなく、どう使いこなし、どう育てていくかを考える一助となれば幸いです。
もし、予約のあり方や運用についてお悩みがあれば、ぜひ一度、弊社までお気軽にご相談ください。