── 貴院の特徴について教えていただけますか?
当院は「こどもが笑顔で暮らし、働く人が輝く社会をつくる」というミッションを掲げています。そのため、お子さんや働くご両親にとって来院しやすいクリニックであることを一番のコンセプトとしています。
具体的には、時間予約制や、診察券の代わりにスマートフォンでのチェックインやWEB問診票の活用など、患者さんの時間を大切にする工夫が特徴です。
開業して1年が経ちますが、患者さんから「雰囲気が良い」「キッズスペースがあって来やすい」「スタッフの対応が良い」といったお声を多くいただきます。
特に、お子さん連れで何十分も待つのは親にとっては大きなストレスなので、「ほとんど待たずにすぐ診てもらえる」という点には感謝の声を多くいただいています。 また、インフルエンザ予防接種のWEB決済など、時短になるような様々な取り組みも行っています。
また、当院では手術設備がないため、手術が必要な患者さんは手術可能な施設へ紹介しています。周囲には大学病院や大きな病院がいくつもあるため、無理に当院で手術を行う必要はないと考えています。手術は時間がかかるため、日常の診療の効率化を考えると、割り切ることも必要だと判断しました。患者さんの時間を守り、日々の診療をスムーズに回すことを最優先にしています。

── 順番待ち受付の運用が多い耳鼻咽喉科で、あえて時間予約制で運用されているのですね。その背景を教えていただけますか?
当院のミッションである、忙しい子育て世代の方々のことを考えると、時間予約が最適だと考えました。順番待ちだと「何番待ち」と言われてもいつ呼ばれるか予測できず、拘束時間が長くなります。
患者さんにとって時間予約の方が安心して通院できると考え、細かな時間管理や客観的なデータに基づき予約運用を改善できる『メディカル革命 byGMO』(以下、メディカル革命)の導入を決めました。
私自身も小さな子どもを持つ父親であり、同じ立場の方々が「できるだけ待たずに受診できる環境」を求めていることを実感しています。
待ち時間というハードルを下げることで、患者さんが早めに受診しやすくなり、重症化する前に適切に診察できるという大きなメリットもあります。
さらに、院内に長く滞在しないことで、特に耳鼻咽喉科で扱う感染症のリスクを減らすこともできます。
クリニック側からすると、時間をお約束する以上、常に時間を意識する必要があり、プレッシャーになるのは確かです。そのため、診療が滞らないようにする工夫や、スタッフ全員の協力体制が欠かせません。
順番待ち運用には当日来院希望が集中した際に柔軟に受け入れやすいという特長があります。当院ではその柔軟性も活かしながら、急な受診にも対応できるよう運営を工夫し、限られた時間の中で効率的に診療を終えられるよう日々改善を続けています。
──メディカル革命での時間管理において実践していらっしゃる工夫は大変興味深いです。もう少し詳しくお聞かせください。
開業当初は、15分単位の時間帯予約でそれぞれの時間帯に4人~5人の設定で運用していましたが、半年ほどで「10分単位の時間指定予約」に切り替え、時間枠内に3人~4人の運用に変更しました。
変更した理由としては、例えば9時~9時15分の時間帯予約だと「どうせ同時間帯の他の患者もいるので9時10分くらいに行けばいいか」と枠時間ギリギリに来院される患者さんが少なくなく、間で空白の時間が生まれてしまったり、次の時間帯の診療にしわ寄せが起こることが度々ありました。
そこで10分単位の時間指定予約にすることで、患者さんの心理的により遅刻しにくく感じるのではないかと考えました。患者さんにとって「時間帯」という言葉は聞き慣れない言葉だと思いますし、10分枠であれば、例えば9時のご予約で9時10分に呼ばれても、患者さんは「待たされた」と感じにくいと思いますので、それならば「時間予約」と言い切った方が患者さんにとっても分かりやすいですし、当院としてもより強みになると考え、現在は「10分単位の時間指定予約」として運用しております。
実際に運用してみると、患者さんの遅刻が減り、以前よりスムーズに診療が回るようになりました。メディカル革命は時間単位を細かく設定できるので、クリニックの状況に応じた設定に変更しやすく、時間管理における工夫がしやすいと思います。
この1年で1日平均100人ほど、インフルエンザや花粉症のシーズンはピーク時で1日160人ほど来院いただいていますが、平均院内滞在時間は初診の患者さんで15分ほど、再診の患者さんで10分ほどとなっています。
ここでいう滞在時間とは、診察までの待ち時間だけでなく、患者さんが来院されてから診察を終え、会計を済ませてお帰りになるまでの一連の時間を指します。
順番待ちの場合、当日の診察状況によって待ち時間にばらつきが生じることもありますが、当院の時間予約制の運用では、すべての患者さんが概ね短時間で滞在を完結できているのが特徴です。
しかしながら、夕方の時間や土曜日などニーズの高い時間では、予約枠が埋まり、時間外でお待たせしてしまう場合があったり、予約が取れなかった時点で他院に流れてしまっているケースも多いのではないかと思います。この辺りは今後診療体制の拡充や更なる効率化など対応策を検討し、実行していく必要があると思います。

──すべての患者さんが待たずにさっと診療を受けることができる、というのは理想的な運用ですね。それでも待ち時間が発生する場合もありますか?
幸いなことに現在のところ30分以上診療が滞ったことはないのですが、30分以上滞っている場合を想定して、1時間先までの予約患者さんへのお詫びと予約変更を促すLINE・メールの配信や来院された方への対応については院内研修で予行を行なっています。
遅延が生じている状況では院内も混沌としている可能性が高いと思いますので、こういった事前の準備は大切だと考えております。
──時間予約は、スタッフの皆さまにとってどのようなメリットがありますでしょうか?
開業当初から残業時間は少なく、現在も月に15時間前後、1日あたり30分~1時間未満と、ほぼ一定の水準を維持できています。
先ほども申しましたが、初診が15分、再診が10分程度と診療時間の見通しが立ちやすいため、受付から会計までの流れが滞らず、業務を計画的に進められていることが大きいと思います。
また、診療の時間があらかじめ決まっていることで、スタッフ一人ひとりが自分の役割に集中しやすく、業務の分担や協力もスムーズに行えます。結果的に「残業が少ない」という形で働きやすさにつながっていますし、この環境を維持するためにスタッフ全員で日々工夫を重ねています。
── 集患対策についてお伺いいたします。開業から1年を振り返っていかがでしょうか?
開業時には電柱広告・看板・Googleリスティング広告などを行っていました。しかし、開業後1年が経ってそれらを見直し、電柱広告など集患の効果測定がしにくいものは全てやめました。
その分の費用をGoogleリスティングやSNS広告に再配分しています。特にMeta広告は、睡眠時無呼吸症候群や舌下免疫療法など、ターゲットが明確な疾患に対して効果的だと考えています。 メディカル革命のGoogleマップでのオンラインマップ集患(※)の利用も開始したので、効果測定を定期的に行いたいと思っています。
※弊社提供オプションサービス
最近3ヶ月のデータを見ると、ネット検索からの来院が半分以上を占めています。やはりホームページは重要だと感じているので、今後はもっとコンテンツを増やし、SEO対策も強化していきたいです。
── クリニックの診療圏についてはいかがでしょうか?
平均診療圏は1.13kmと、耳鼻咽喉科としてはやや狭いと感じています。近くに大通りがあったり、近隣に競合となる耳鼻咽喉科や小児科、内科など多くのクリニックがあるため、わざわざ遠くから来られる患者さんは少ないのかもしれません。
しかし、この地域は人口密度が非常に高いため、1.1kmという診療圏でも十分に患者さんにリーチできており、継続的に来院いただいています。
LINEの友達登録者数はすでに7500人を超え、初診率も良い水準を保つことが出来ています。
さらに、LINEを活用した予約や情報発信によってリピートにもつながっており、患者さんとの関係性を継続的に築けていると感じています。
ホームページで「すぐに診てもらえる」といった時間的なメリットをアピールしていることが、LINE登録に繋がっているのかもしれません。メディカル革命のLINEでの予約機能も患者さんからは非常に好評です。

── 患者さんの満足度を高い水準で維持できている秘訣を教えてください。
私は「医師でないと出来ないもの」に集中し、それ以外の患者さん対応は積極的にスタッフに任せるようにしています。
たとえば発熱外来では、診察の段階で検査が陰性だった場合と陽性だった場合の処方内容などについては私が患者さんに説明しておき、検査判定後の薬や隔離期間などの追加情報についてはスタッフが説明する、という流れです。
アレルギー検査の説明などもスタッフが事前に対応することで、診療時間を大幅に短縮できます。
もちろん、スタッフが説明できるようになるには一定の教育や経験が必要ですが、私は皆で協力して診療にあたりたいと考えているので、積極的に任せています。
その結果、スタッフにとっても医療事務としてのスキル向上になりますし、自信ややりがいにつながってくれることを期待しています。
── クリニックの雰囲気やスタッフの皆様の雰囲気はいかがでしょうか?
当院では、開業時に設定したミッションやビジョン、バリューをスタッフに定期的に伝えており、皆が同じ思いを持って働いてくれていると感じています。おかげさまで、スタッフは開業時の6名から今は8名に増えました。
ほとんどのメンバーが開院時より継続して勤務してくれており、当院の時間運用には慣れています。開業時に採用したスタッフの中には、採用サイトに私が細かく書いたクリニックへの思いに共感して「一緒にクリニックを作りたい」と言って来てくれた方もいます。
現在在籍しているスタッフも含め、共通してその思いを大切にしながら働いてくれていると感じています。

── 今後のクリニックの展望や、これから開業を考えている先生方へのアドバイスがあれば教えてください。
睡眠時無呼吸症候群や舌下免疫療法、補聴器外来など、地域の皆さんの豊かな暮らしをサポートしつつ、経営的にも季節に左右されず継続的に収益が見込める分野に、今後はさらに力を入れていきたいと考えています。
特に睡眠時無呼吸症候群は、まだ適切に治療を受けていない潜在患者さんが多く、妻が担当している矯正歯科部門でのマウスピース治療とも相性が良いため、積極的に取り組んでいきたい領域です。
開業してまだ1年ですが、今後は診療日の拡充や医師の増員も進め、地域のニーズにより柔軟に応えられる体制を作っていきたいと思っています。特に土曜日は予約が埋まりやすいため、将来的には2診体制にして、木曜や日曜の診療も実現できれば、患者さんにとってより安心して通えるクリニックになるのではないかと考えています。
さらに、医療にとどまらず、子どもや子育て世代をサポートできるようなサービスや取り組みも展開していきたいです。
夏休みに「キッザニア」のようなお仕事体験イベントを実施しましたが、大変好評でした。こうした地域の方々との交流が、クリニックの姿勢やブランディングにもつながっていると感じています。
効率化や医療DX、AIといった新しい技術を積極的に取り入れ、当院での取り組みが他のクリニックの参考にもなるようなモデルを作りたいと考えています。
これから開業される先生方にとって「こんなやり方もあるんだ」と思っていただければ嬉しいですし、当院の取り組みが少しでも医療界全体への貢献につながれば幸いです。
▼ 仲宿つくも耳鼻咽喉科・矯正歯科 WEBサイト
https://www.tsukumo-clinic.jp/