こんにちは。GMOリザーブプラスです。
医療現場は今、目まぐるしい変化と課題に直面しています。
人口高齢化や医師・看護師の不足、診療報酬の制約など、病院経営を取り巻く環境は厳しさを増しています。
実際、近年は病院の赤字経営が各所で報じられるようになり、経営面・現場運営の両立がこれまで以上に求められる状況となっています。
こうした背景の中で、特に小中規模病院においては、
● 外来は混んでいるのに、効率的な運営ができない
● 患者満足度を上げたいが、時間も人員も足りない
といった悩みが、決して特別なものではなく、日常的な課題として多くの現場で共有されるようになっています。
そのような中、予約受付のデジタル化―― いわゆる 予約DX(デジタルトランスフォーメーション) が、外来改革の突破口として注目されています。
本記事では、「ネット予約を導入すべきかどうか」という表層的な議論ではなく、
● なぜ今、病院経営において予約DXが重要なのか
● 病院という組織で、無理なく・失敗せずに始めるにはどうすればよいのか
を、現場支援の経験をもとに整理していきたいと思います。
1.なぜ今、病院にネット予約が必要なのか?ー外来のボトルネックは入り口に集中している
多くの病院では、外来が混雑しているにもかかわらず、 職員の業務負担が大きく、サービス改善に手が回らないという共通課題を抱えています。
これは、診療報酬制度や人口動態といった構造的な問題だけが原因ではありません。
その中でも、比較的少ない負荷で着手でき、かつ効果が波及しやすい領域があります。
それが、「外来の入り口」です。
多くの病院で共通して見られる課題は、次の3点に集約されます。
① 電話対応が外来を圧迫している
「予約したい」「予約できるかを知りたい」「どの科を受診すべきか知りたい」「変更したい」。
こうした電話が1本長引くだけで、窓口対応は滞り、クレームにつながることもあります。
電話対応は一見些細な業務に見えますが、 積み重なることで、外来全体の流れを確実に詰まらせていきます。
② 待ち時間が患者満足度を直撃している
「病院の2時間待ちは当たり前」という常識は、すでに崩れ始めています。
スマートフォンで時間を管理し、行動を最適化する時代において、 長時間の待ち時間は「仕方ないこと」ではなく、選ばれない理由になりつつあります。
③ 職員の業務負担が限界に近い
外来の詰まりは、受付・看護師・検査・会計・医師と、すべての部署に波及します。
結果として、現場は常に「余力のない状態」に置かれます。
これら3つの問題に共通しているのは、 「来院時間がコントロールされていないこと」 です。
患者さんがいつどのぐらいの人数来るか分からない状態では、 どれだけ現場が頑張っても、外来は詰まり、負荷は増え続けます。
だからこそ、予約DXは外来改革の入り口として、最も現実的な一手になるのです。
2.ネット予約の本当の役割は、「外来の入り口を増やすこと」
病院でネット予約を検討する際、よく聞かれるのが
「すでに電子カルテ内の予約システムで管理しているので、ネット予約を入れると予約がバッティングしてしまうのではないか」
という不安の声です。
その結果、
「病院ではネット予約は難しい」
「電子カルテと完全に連携しないと無理だ」
と、導入そのものを諦めてしまうケースも少なくありません。
確かに、予約を100%電子カルテ内の予約システムで厳密に管理している場合、そこに別の予約経路を追加することに心理的な抵抗があるのは自然なことです。
しかし、実際の外来運営を見てみると、診療科ごとの運用差、医師のスケジュール変更、急患対応など、多くの要素が絡み合い、予約のすべてを電子カルテ内で管理できている病院は決して多くありません。
ここで視点を少し変える必要があります。
2-1. ネット予約は「予約管理をすべて置き換えるもの」ではない
ネット予約の目的は、
既存の予約管理をすべてネット予約に置き換えることではありません。
むしろ重要なのは、
● 現在の予約管理はそのまま活かしながら
● 外来の「受け口」を一つ増やす
という考え方です。

たとえば、
● 初診の予約
● 急な症状で来院したい患者さん
● 電話がつながらず困っている患者さん
こうしたケースに対して、
病院内の予約管理のうち「10%程度」をネット予約で受けられるようにする
それだけでも、患者さんの利便性と現場の負担は大きく変わります。
2-2.「すべてをネット予約化しない」という割り切りが重要
病院でのネット予約は、「すべてをネット予約にしなければ意味がない」ものではありません。
現状の予約管理に、ネット予約をアドオン(追加)する。
この発想こそが、病院で無理なく導入するための現実解です。
もちろん、ネット予約を開始する際には、
● 電子カルテの予約枠との簡単な整合性
● どの診療科・どの時間帯をネット予約に開放するか
といった最低限の調整は必要になります。
しかし、その調整にかかる労力を上回るほどの恩恵――電話対応の削減、患者満足度の向上、外来の流れの改善――が得られるケースがほとんどです。
2-3.ネット予約は「外来改革の入口」を広げる仕組み
ネット予約とは、病院の予約管理を複雑にする仕組みではありません。
● 電話以外の選択肢を用意する
● 患者さんがアクセスしやすい入り口を増やす
● 外来の混雑を「量」ではなく「流れ」で改善する
そのための、外来改革の入り口を広げる仕組みです。
このように捉えることで、「病院では難しい」と思われがちなネット予約も、現実的で、かつ効果の高い取り組みとして検討できるようになります。
3.電子カルテ連携を前提に考えると、なぜ前に進めなくなるのか
ネット予約を検討する際、多くの病院で次のような議論が起こります。
「電子カルテと連携できないなら意味がないのでは?」
「予約はすべて電子カルテで一元管理したい」
この考え方自体は、決して間違いではありません。
理想的な状態を考えれば、予約・診療・会計までが一気通貫でつながる姿を描きたくなるのは自然です。
しかし、病院という組織において、この理想を最初から前提にすると、プロジェクトはほぼ確実に止まります。
理由はシンプルです。
● 電子カルテの機種によって、連携可否が分かれる
● ベンダー調整・要件定義が大掛かりになる
● 導入までに時間とコストがかかる
結果として、
● 現場の負担が増え
● 合意形成が難航し
● 「今回は見送ろう」という結論に落ち着く
という流れが、非常によく見られます。
繰り返しになりますが、重要なのは、 ネット予約の第一目的は「外来の入り口を増やすこと」であり、システム統合ではない という点です。
電子カルテ連携は、 運用が安定し、効果が見えたあとに検討する「次のフェーズ」で十分です。
4.だから病院のネット予約は「スモールスタート」が正解になる
ここまでを整理すると、病院でネット予約を成功させる条件は明確です。
● 既存の予約管理を壊さない
● 電子カルテ連携を前提にしない
● 外来の一部だけを対象に始める
つまり、スモールスタートです。
具体的には、次のような始め方が現実的です。
4-1.対象を絞る
● 1つの診療科のみ
● 初診のみ
● 発熱外来など、ネット予約のニーズが高い領域のみ
4-2.ルールをシンプルにする
● 曜日
● 時間帯
● 枠数
最初から細かい条件を詰めすぎないことが重要です。
4-3.設備投資は最小限にする
● ノートPC 1台
● インターネット回線(Wi-Fi可)
外来全体を変えようとせず、 「まず1か所だけ流れを変えてみる」。
この発想が、病院では最も成功率が高くなります。
5.導入事例①国立病院機構 東京医療センター様― 歯科口腔外科・初診予約からのスモールスタート
東京医療センター様では、 歯科口腔外科の初診予約を対象にネット予約を導入しました。
歯科口腔外科の初診予約は、
● 症状の聞き取り
● 既往歴の確認
● 診療内容の整理
などが必要で、電話1件あたり20分近くかかることもある業務でした。
この「重い電話対応」をネット予約に置き換えたことで、
● 予約センターの負担が軽減
● 電話対応に追われる状況が改善
● 現場が本来の業務に集中できる
という変化が生まれました。
すべての予約を変えたわけではありません。
「一番負荷の大きい入口」だけを変えたことが成功のポイントです。
6.導入事例②プライムホスピタル玉島様― 総合病院での発熱外来・一般外来のネット専用枠
プライムホスピタル玉島様では、 総合病院でありながら、発熱外来および一般外来の一部にネット専用枠を設け、 いち早く予約DXに対応されました。
発熱外来は、
● 電話が集中しやすい
● 急な受診希望が多い
● 確認事項や受診案内などの説明が多く、現場の負担が大きい
という特徴があります。
ネット専用枠を設け、WEBで問診をとることで、
● 電話対応が減少
● 来院の分散が進む
● 外来全体の落ち着きにつながる
という効果が得られました。
ここでも重要なのは、「全部を変えない」「必要なところだけ変える」 という判断です。
プライムホスピタル玉島様では、「ネット予約利用者のためのネット予約」という用途に限定し、当初の科目からさらに受付科目を増やし、現在では、発熱外来、インフルエンザワクチン、整形外科、形成外科、脳神経外科、泌尿器科、乳腺・甲状腺外科(乳がん検診)、スポーツリハビリテーション、循環器外来、腎・高血圧外来など、10診療科目で初診、再診の受付を行っていらっしゃいます。
7.導入事例③小児科×LINE予約から始めた段階導入モデル
別の病院では、ネット予約の要望が特に高かった小児科のみを対象に、LINE予約を開始しました。
小児科では、
● 電話がつながらない
● 診療時間外に予約したい
● 急な体調変化が多い
といったニーズが顕著です。
LINEという日常的なツールを使うことで、
● 保護者の利用率が高く
● 電話件数が自然に減り
● 現場の納得感も得やすい
という結果につながりました。
運用が安定した後、 予約枠を徐々に拡大し、他診療科への展開を検討する流れが生まれています。
8.病院でネット予約を定着させるための考え方
これまでの事例に共通しているのは、
● 予約DXを「システム導入」と捉えていない
● 外来の困りごとを一つずつ解決している
● 成功体験を現場で共有している
という点です。
トップダウンで押し付けるのではなく、 「楽になった」「助かった」という現場の実感が、次の展開を後押しします。

9.まとめ 予約DXは、外来改革の入り口である
ネット予約は、 病院の予約管理を複雑にするものではありません。
● 外来の入り口を増やし
● 患者さんの利便性を高め
● 現場の負担を軽減する
外来改革のスタートとなる取り組みです。
今すぐ全ての診療科で始める必要はありません。できるところから、最小スコープで。
それが、病院の外来改革を成功させる、最も現実的な方法です。
いかがでしたでしょうか?
「電話対応が限界」「待ち時間の改善に手が付けられない」
そうした課題を感じている病院様にとって、本記事が 現実的な選択肢の一つ として、少しでも参考になりましたら幸いです。
弊社のメディカル革命は、病院でのご導入実績が多数ございます。ぜひ、一度お気軽にご相談ください。
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