政府が推進する働き方改革は、労働者の健康や生活の質を向上させるために制定されたもので、医療従事者にも多大な影響を及ぼしています。開業医も勤務医も、働き方改革について正しく理解しておくことが重要です。
この記事では、クリニックにおける働き方改革の背景や具体的な内容を紹介した上で、医師がどのような戦略をとるべきかをわかりやすく解説します。
1．クリニックや病院における働き方改革の背景と法的要件
2019年に施行された働き方改革では、看護師や受付スタッフを含む一般労働者を対象として、時間外労働の上限規制や有給休暇の取得義務化などが規定されました。まずは、2024年の働き方改革の概要や医師への影響について具体的に見ていきましょう。
1-1. 2024年の働き方改革の概要とクリニック経営への影響
2024年4月の改正では、長時間労働が常態化している現状を是正するため、医師も働き方改革の対象となりました。
具体的には、医師の時間外労働時間が年間960時間以下、月ごとの労働時間上限が100時間と厳格に規定されることが大きな変更点です。この規制に対応するため、勤務医が自身の労働時間を正確に管理するのはもちろん、クリニック経営者は雇用する医師の勤務体制を見直す必要が生じる可能性があります。
1-2. 医師の時間外労働規制におけるA・B・C水準の要件
2024年の働き方改革において、医師の時間外労働規制は、勤務する医療機関の特性や業務内容によって基本的にA・B・Cの3つの水準に分けて適用されます。それぞれの水準に応じて時間外労働の上限や規制が決まっています。
● A水準：時間外・休日労働時間の上限は年間960時間。全ての勤務医に対して原則的に適用されます。
● B水準：時間外・休日労働時間の上限は年間1,860時間。地域医療の確保のため、自院内で長時間労働が必要な場合（救急医療や高度な治療など）に適用されます。なお、本務以外の副業・兼業として派遣される場合には、連携B水準が適用されます。
● C-1水準：時間外・休日労働時間の上限は年間1,860時間。臨床研修医や専攻医の研修のために長時間労働が必要な場合に適用されます。
● C-2水準：時間外・休日労働時間の上限は年間1,860時間。専攻医を卒業した医師の技能研修のために長時間労働が必要な場合に適用されます。
2. 労働時間の上限規制と勤務医の選択肢
働き方改革により勤務医の労働時間には上限が設けられ、従来の労働スタイルの見直しを迫られています。特に、時間外労働の減少による収入への影響や、労働環境の変化にどのように対応するかが大きな課題です。次に、勤務医が直面する労働時間規制の現状と、新たな働き方の選択肢について詳しく見ていきましょう。
2-1. 勤務医の労働時間規制の現状
これまで多くの勤務医は、長時間労働や時間外勤務を通じて収入を確保していましたが、働き方改革によりその状況が大きく変わろうとしています。特に、労働時間の上限が定められたことで、勤務医が副業として他の医療機関でアルバイトをする機会が制限され、収入の減少が懸念されています。
副業としての医療機関でのアルバイトは、勤務医にとって重要な収入源の一つです。しかし、時間外労働が960時間を超えないように管理されるため、複数の職場で働くことが難しくなる可能性があります。
2-2. 新たな選択肢としての開業
こうした状況の中で、新たな選択肢として「開業」が注目されています。開業医自身は個人事業主なので、働き方改革による労働時間の上限規制の対象外です。開業すれば、労働時間を自分のペースで管理しながらやりたい診療に専念できるだけでなく、大幅な年収アップも目指せます。
3. 開業医が直面する課題と対応策
働き方改革は勤務医だけでなく、クリニックを経営する開業医にもさまざまな課題をもたらしています。スタッフの労働時間の管理や有給休暇の義務化などに適切に対応しなければ、経営に支障をきたす恐れがあります。次に、開業医が直面する具体的な課題とその対応策について詳しく見ていきましょう。
3-1. 非常勤医師の確保が難しくなる可能性
働き方改革によって、開業医が直面する大きな課題の一つが、非常勤医師の確保の難しさです。非常勤医師の労働時間にも厳しい制限が課せられるため、これまでのように柔軟な働き方を求めることが難しくなっています。
特に、時間外労働の上限が設けられたことで、複数のクリニックで働く非常勤医師は、自身の勤務時間を厳密に管理しなければならなくなりました。その結果、労働時間がオーバーしてしまうリスクがある場合は、雇用していた非常勤医師が勤務を辞退するケースも考えられます。
業務効率化によって院長一人でも不安なく経営できる体制の構築や、非常勤医師の労働条件の見直しなど、柔軟な対策が求められます。
3-2. 年次有給休暇取得の義務化
スタッフに対しては、一定の日数の有給休暇を与えることが法的に義務付けられています。年次有給休暇の付与は正社員だけでなく、パートタイムや非常勤のスタッフにも適用されるため、クリニック全体で適切な管理が求められます。有給休暇の取得が義務化されることで、スタッフごとの有給休暇日数の厳格な管理や、休暇取得中のスタッフの代替人員の確保など、経営者としての負担も増えることが予想されます。
この問題に対処するためには、労務管理を徹底し、事前にスタッフの休暇スケジュールを調整することが重要です。また、スタッフの休暇中でも業務を円滑に進行できるように、業務の標準化やITツールの導入が効果的です。突発的な休暇取得にも対応できる柔軟な勤務体制を整え、患者さんへの影響を最小限に抑える対策を講じましょう。
3-3. 労働時間把握の義務化
働き方改革に伴い、従業員の労働時間の把握が義務化されました。特に臨床現場では勤務時間が不規則であり、労働時間の管理が曖昧になってしまうケースも少なくないでしょう。しかし、労働時間の正確な把握と管理は、労働時間が過度に長くなることを防ぎ、従業員の健康を守るための重要な措置です。
これを受けて、開業医はスタッフの勤務時間を徹底的に管理する必要があります。具体的な対策としては、タイムカードや勤怠管理システムを導入することで、従業員の出退勤時間を自動的に記録し、正確な労働時間を把握できるようにすることが考えられます。出退勤時の着替えや片付け・清掃など診療時間外の業務も含まれるので注意が必要です。クリニックの経営スタイルによっては、変形労働時間制の導入も検討するといいでしょう。
3-4. 同一労働同一賃金への対応
働き方改革の一環として導入された「同一労働同一賃金」の原則は、同じ仕事に対しては、正社員か非正社員かにかかわらず、同等の賃金と待遇の保証を求めるもので、非正規雇用労働者の待遇改善を目指しています。非常勤医師やパートタイムで働く看護師でも、業務内容や負うべき責任が正社員と同等なら、給与だけでなく福利厚生や教育訓練の機会なども正規雇用と同じ水準で提供する必要があります。
同一労働同一賃金を遵守しない場合、従業員から不満が生じる可能性があるだけでなく、法的なトラブルに発展するリスクもあります。正社員と待遇差がある場合は、非正規職員への説明義務が生じます。
3-5. 違反した場合は罰則も
働き方改革における規定に違反した場合、開業医やクリニック経営者には罰則が科される可能性があります。労働時間の上限規制や有給休暇の取得義務化、労働時間の把握義務などの規定に違反した場合、労働基準監督署から指導を受け、是正を求められることがあります。指導に従わない場合は、営業停止処分を受ける可能性も考えられます。
罰則を受けることで、クリニックの信用が低下するだけでなく、経営に深刻なダメージを与える可能性があるため、法的な規制をしっかりと理解し、準備を怠らないことが重要です。
4. 働き方改革の取り組みで活用できる補助金
働き方改革に取り組む際、クリニック経営者は利用可能なさまざまな補助金や助成金制度を活用することで、経営負担を軽減しつつ労働環境を改善することができます。特に、業務効率化や労働時間管理のためのシステム導入や設備投資を行う際に、補助金の活用が有効です。
働き方改革推進支援助成金は、クリニックが労働時間の短縮や労働環境改善に向けた取り組みを行う場合に支給される助成金です。例えば、業務効率化のためのITツールの導入が補助対象となり、導入コストの一部を支援してもらうことができます。
働き方改革推進支援助成金（労働時間短縮・年休促進支援コース） ｜厚生労働省
また、ITツール導入に関しては、IT導入補助金も活用できます。この補助金は、業務効率化を目的としたITツールの導入に対して支給され、クリニックが電子カルテや診療予約システム、勤怠管理システムを導入する際に活用可能です。
トップページ ｜ IT導入補助金2024
これらの補助金制度をうまく活用することで、クリニックの経営コストを抑えながら働き方改革を推進し、労働環境の改善や業務の効率化を図ることができます。専門家のアドバイスを受けながら、補助金の申請を適切に行うことが成功の鍵です。
5. クリニックの働き方改革ではITツールの導入が効果的
働き方改革に対応するために、ITツールの導入はクリニックにとって欠かせない要素となっています。特に、業務効率化や労働時間の管理を目的としたITツールは、労働環境やクリニック経営の改善に大いに役立ちます。
5-1. 電子カルテ
従来の紙カルテでは、患者さんの情報を手書きで記入し、ファイリングする作業に多くの時間と労力がかかっていました。しかし、電子カルテを導入することで、診療内容や患者さんのデータをデジタル化して効率的に管理できるため、医師やスタッフは事務作業の手間や負担を削減できます。
電子カルテは情報の共有を容易にし、医師や看護師がリアルタイムで患者さんの診療情報にアクセスできるため、診療の質も向上するでしょう。
5-2. 診療予約システム
診療予約システムは、患者さんの予約管理を効率化し、クリニックの業務負担を大幅に軽減できるITツールです。従来、電話や窓口での対応を通じて手作業で行っていた予約管理を、診療予約システムの導入で自動化できます。
また、予約確認のメールやリマインダー機能を活用することで、患者さんが予約を忘れるリスクを減らし、無断キャンセルを防ぐ効果も期待できます。
オンラインで24時間いつでも患者さん自身が予約をとることができるため、患者さんにとっても利便性の高いツールです。診療予約システムの導入により、クリニック全体の運営が効率化されるだけでなく、患者さんへのサービス向上にもつながります。
5-3. 勤怠管理システム
勤怠管理システムは、従業員の労働時間を正確に把握し、労働時間規制を遵守するために欠かせないITツールです。クリニックでは、医師や看護師、受付スタッフなど、異なる勤務形態を持つ従業員が多く存在するため、勤怠管理が複雑になりがちです。勤怠管理システムを導入することで、従業員の出退勤時間を自動的に記録し、時間外労働の管理や有給休暇の取得状況をリアルタイムで把握できます。
また、勤怠データは給与計算とも連動させることができるため、労務管理の効率化にもつながります。労働時間の集計や残業時間の計算がシステム上で自動化されるため、事務作業の負担が大幅に減り、労務トラブルの防止にも役立ちます。
6. 「メディカル革命 byGMO」はクリニックの業務効率化をトータルにサポート
診療予約システム「メディカル革命 byGMO」は、クリニックの業務効率化をトータルにサポートするソリューションを提供しています。高度な予約最適化エンジンを搭載しており、クリニックの診療スタイルに合わせた柔軟な予約制御が可能で、受付での調整業務の負担を削減しつつ、予約数の最大化を実現可能です。
また、電子カルテをはじめとする外部システムとの連携実績も豊富で、キャッシュレス決済などの多彩な機能が利用できるためクリニック全体の業務効率化に貢献します。
7. 「メディカル革命 byGMO」で業務改善をしたクリニックの事例
「メディカル革命 byGMO」を活用して、実際に業務改善を実現したクリニックの事例を紹介します。これらの事例は、ITツールの導入がどのようにクリニックの運営効率やスタッフの働き方にポジティブな影響を与えるかを示しています。
7-1. ベースボール&スポーツクリニック 様
ベースボール&スポーツクリニック様（整形外科）では、診療予約システム「メディカル革命 byGMO」の導入により、業務効率化と患者サービスの向上を実現しました。
特筆すべき点は、理学療法士ごとの予約管理が可能になったことです。患者さんはWEBで担当者を指名して予約できるようになり、理学療法士も自身の予約状況を一目で確認できるようになりました。
また、QRコードによるセルフチェックインシステムにより、受付業務の負担が大幅に軽減されました。現在では約9割の患者さんが自身でチェックインを行っています。さらに、キャッシュレス決済の導入により、会計の混雑が緩和されました。リハビリ後に受付を通らずに帰れるようになり、クリニック内の人の流れが改善されています。
これらの施策により、患者数が増加しても2名の受付スタッフで対応できる体制が整い、待合室の混雑も解消されました。
導入事例：ベースボール&スポーツクリニック 様
7-2. さかい胃腸・内視鏡内科クリニック 様
さかい胃腸・内視鏡内科クリニック様では、「メディカル革命 byGMO」の導入により、患者さんの来院時間を平準化し、待ち時間を1時間半から30分以内に短縮しました。また、WEBとLINEでの予約の活用で、予約の約半数がオンラインとなり、受付スタッフを3名から2名に減らすことができました。
さらに、大腸カメラ検査の仮予約システムにより、事前診察の忘れやキャンセルがほぼなくなりました。これらの改善により、診察の質を落とさず患者さん一人ひとりに集中できるようになり、クレームも減少しました。
予約患者の症状が事前にわかるため、医師と受付スタッフの業務準備が効率化され、全体的な業務効率が向上しました。また、30代、40代の若い患者層や遠方からの患者も増加し、クリニックの成長につながっています。
導入事例：さかい胃腸・内視鏡内科クリニック 様
8. まとめ：効果的なツール導入で働き方改革に対応しよう
クリニックや病院における働き方改革は、従業員の労働環境を改善し、質の高い医療サービスを持続的に提供するために欠かせない取り組みです。しかし、診療の質を維持しながら、限られた人的リソースでクリニック運営を進めるには、従来の業務スタイルでは限界があります。
そこで有用なのが、電子カルテや診療予約システム、勤怠管理システムといったITツールです。こうしたITツールをうまく活用することで、医師やスタッフの負担を軽減しながら、患者さんへの対応も迅速かつ丁寧に行えるようになります。
「メディカル革命 byGMO」のような診療予約システムをはじめとした利便性の高いサービスを導入してクリニックの業務を効率化し、働き方改革を推進してください。