近年、キャッシュレス決済はさまざまな業態で普及が進んでおり、医療機関にもその波が押し寄せています。特にクリニックでは、患者さんの利便性を高めるために、クレジットカードや電子マネー、QRコード決済などのキャッシュレス決済を導入するケースが増えています。
本記事では、クリニックにおけるキャッシュレス決済の現状や、導入のメリット・デメリット、おすすめの決済サービスについて詳しく解説します。
クリニックにおけるキャッシュレス決済の現状
患者さんの支払い手段が多様化する中、クリニックはより便利な決済方法を提供する必要があります。まずは、日本におけるキャッシュレス決済の普及状況や、医療機関におけるトレンドについて詳しく見ていきましょう。
1-1 キャッシュレス決済の普及状況
キャッシュレス決済は、近年急速に普及しています。経済産業省が発表したデータによれば、日本におけるキャッシュレス決済比率は年々増加しており、2021年には約32.5%に達しました。特に都市部を中心に、飲食店や小売業だけでなく、さまざまなサービス業でもキャッシュレス決済が標準となりつつあります。
一方で、地方や高齢者層を中心に、現金主義の根強い層も存在しているといわれており、全ての地域や年齢層でキャッシュレス決済が完全に普及しているわけではありません。しかし、全体的なトレンドとして、キャッシュレス決済の導入は今後さらに加速していくと予想されています。経済産業省は2025年までにキャッシュレス決済比率を40%程度、将来的には80%を目指すという目標を掲げています
引用:経済産業省「キャッシュレスの将来像に関する検討会とりまとめ」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_future/20230320_report.html
1-2 医療機関におけるキャッシュレス決済のトレンド
これまで医療機関では現金での支払いが主流でしたが、キャッシュレス決済の普及に伴い、クレジットカードや電子マネー、QRコード決済などが導入されるケースも見られるようになりました。
厚生労働省が2023年に公表した「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査結果報告書」によると、医療機関におけるキャッシュレス決済の導入率は以下の通りです。
- クレジットカード決済(デビットカード含む):60.9%
- QRコード決済:5.6%
- その他の電子マネー:6.8%
- その他の決済サービス(口座振替・銀行振込・コンビニ支払いなど):2.3%
キャッシュレス決済は患者さんの利便性向上につながるのはもちろん、接触機会を減らすことで院内感染リスクを低減できる点も注目されています。また、キャッシュレス決済はリモートでの会計処理にも適しており、普及が進んでいるオンライン診療でも需要が高まっています。
さらに、クリニックでの会計業務の効率化や、現金の取り扱いによる人的ミスの削減といった効果も期待されており、今後もキャッシュレス決済の導入が進んでいくと考えられます。
引用:厚生労働省「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査結果報告書」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33994.html
クリニックで利用されるキャッシュレス決済の種類と特徴
クリニックで導入されているキャッシュレス決済には、いくつかの種類があります。それぞれ、患者さんの利便性やクリニック側の導入コスト、運用面の負担などが異なるため、導入を検討する際には特徴を理解することが重要です。以下で、代表的なキャッシュレス決済の種類について詳しく見ていきましょう。
2-1 クレジットカード
クレジットカード決済は、最も一般的で広く利用されているキャッシュレス決済手段です。多くの患者さんが日常的に使用しているため、クリニックでの導入ニーズも高いでしょう。また、クレジットカードには、分割払いやリボ払いといった柔軟な支払い方法があり、患者さんが大きな医療費を負担する際にも安心して利用できるという利点があります。
さらに、クレジットカード会社が提供するポイント還元やキャッシュバックなどの特典があるため、患者さんにとっては現金払いよりもメリットが多いと感じることが多くあります。
2-2 デビットカード
デビットカードは、支払いの際に即時に利用者の銀行口座から代金が引き落とされる決済方法です。クレジットカードとは異なり、利用者が口座にある残高の範囲内でのみ支払いができるため、支出のコントロールがしやすいという特徴があります。そのため、クレジットカードを持たない若年層や現金をあまり持ちたくない人に人気があります。
ただし、デビットカードはクレジットカードに比べて利用者数が少ないため、他のキャッシュレス決済方法との併用が推奨されます。
2-3 QRコード
QRコード決済は、スマートフォンを使って支払うことができるキャッシュレス決済手段で、近年その利用が急速に増えています。この決済方法は、患者さんが専用のアプリを使用し、クリニックが提示したQRコードをスマートフォンで読み取る、または患者さんのスマートフォンアプリで表示したバーコードをクリニックが読み取ることで支払いが完了します。銀行口座やクレジットカード、デビットカードと紐付けて使用でき、手軽で簡単な操作が特徴です。
QRコード決済は、日本国内において特に若年層やビジネスパーソンに人気があり、日常的に使われています。スマートフォンを使用した決済手段の中でもQRコード決済は急速に普及している一方で、依然としてクレジットカード決済などの従来型のキャッシュレス手段に比べると導入率は低めです。
2-4 電子マネー
電子マネーは、プリペイド方式で事前にチャージした金額の範囲内で支払いができるキャッシュレス決済手段です。SuicaやPasmoなど、交通系電子マネーをはじめ、WAONやnanacoなどの流通系電子マネーも広く普及しています。電子マネーは、事前にチャージした金額を利用するため、支出管理がしやすいという特徴があります。
特に若年層や日常的に交通系ICカードを利用している人々にとって、電子マネーでの決済は手軽で便利です。都市部のクリニックや通勤・通学の途中で通院する患者さんが多いクリニックでは、導入ニーズの高さが見込まれます。
一方、電子マネーにはチャージの上限があるため、高額な医療費の支払いには向いていない傾向があります。そのため、クリニックでは他のキャッシュレス決済と併用するといいでしょう。
クリニックでキャッシュレス決済を導入するメリット
キャッシュレス決済の導入は、クリニックにとって多くのメリットをもたらします。患者さんにとっては、支払い手段が増えることで利便性が向上し、クリニック側にとっても業務効率化や他院との差別化など、経営面での多くの利点があります。
ここでは、具体的なメリットをいくつか挙げ、キャッシュレス決済がどのようにクリニック運営を改善するかを解説します。
3-1 患者さんの待ち時間が短縮される
キャッシュレス決済を導入することで、クリニックにおける会計処理がスムーズになります。従来の現金での支払いに比べ、クレジットカードやQRコードなどのキャッシュレス決済は短時間で決済が完了するため、会計にかかる時間が短縮されます。
また、支払いが迅速に完了することで会計窓口での混雑が緩和され、結果として待ち時間の短縮につながるでしょう。会計処理がスムーズに進むことで、クリニックに対して患者さんがポジティブな印象を抱き、再診率の上昇や口コミによる集患にも寄与することが期待できます。
3-2 会計業務の負担が軽減される
キャッシュレス決済の導入は、クリニックのスタッフにとっても大きなメリットがあります。現金の取り扱いが減ることで、会計業務が簡素化され、人的ミスのリスクを軽減できます。現金支払いに伴うつり銭の準備や計算ミスの問題が、キャッシュレス決済ではほぼ解消されるからです。
また、会計業務のスピードが向上することで、スタッフの負担が減り、業務効率化に寄与するでしょう。特に、患者数の多いクリニックでは、会計処理の効率化がスタッフのストレス軽減につながる可能性があります。
さらに、キャッシュレス決済では会計データが自動記録されるため、日々の売上管理の正確性が向上し、財務処理の精度が高まります。
3-3 他院と差別化できる
キャッシュレス決済の導入は、他院との差別化にもつながります。特に、キャッシュレス決済がまだ十分に普及していない地域では、患者さんにとって利便性の高い決済手段をいち早く導入することで、「利便性の高いクリニック」という印象を与えることができます。
特に若年層やビジネスパーソンなど、日常的にキャッシュレス決済の利用率が高い患者層に対しては、大きなアピールポイントとなるでしょう。
3-4 院内感染対策になる
キャッシュレス決済は、院内感染対策の観点からも非常に効果的です。現金のやり取りは、手から手へと細菌やウイルスが移るリスクが高く、衛生面での懸念が常に伴います。特に、新型コロナウイルスの感染拡大以降、非接触型の決済手段へのニーズが急速に高まっています。
キャッシュレス決済では、現金に触れる必要がなく、患者さんとスタッフが直接接触する機会を減らすことができます。特に、QRコード決済や電子マネー決済などスマートフォンを使った非接触型決済は、クリニックの感染対策を強化する上で効果的です。また、クレジットカード決済でも、患者さんが自分でカードを挿入したりタッチ決済を行うことで、接触を最小限に抑えることが可能です。
さらに、キャッシュレス決済の導入は、患者さんに安心感を与えることにもつながります。感染リスクを低減するための取り組みとして、非接触決済を導入していることを明示すれば、クリニックの感染対策に対する信頼性が高まり、患者さんの満足度向上にも寄与します。こうした取り組みは、特に高齢者や免疫力の低い患者さんにとって重要なポイントとなります。
3-5 オンライン診療に対応しやすくなる
キャッシュレス決済は、オンライン診療との相性が良いのも特徴です。オンライン診療は、患者さんが自宅からリモートで診療を受けることができるため、対面での会計が難しいケースもあります。
キャッシュレス決済に対応したオンライン診療システムを利用することで、診療後にメールやアプリを通じて簡単に支払いを完了させることが可能です。また、支払いの記録が自動的に残るため、クリニック側でも財務管理が効率化され、未収金の回収リスクを低減できます。
オンライン診療とキャッシュレス決済を組み合わせることで、診療から支払いまでの一連の流れを非対面で完結できるため、患者さんが自宅で安全かつ安心して医療サービスを受けることが可能になります。
4段落 キャッシュレス決済のデメリットと課題
キャッシュレス決済には多くのメリットがある一方で、クリニックが導入する際にはいくつかのデメリットや課題も存在します。ここでは、キャッシュレス決済を導入する際に注意すべきデメリットを解説します。
4-1 初期費用や手数料がかかる
キャッシュレス決済の導入において、最も大きな課題の一つが初期費用や手数料の負担です。クレジットカード決済や電子マネー決済を導入する際には、専用の端末機器を導入するための初期投資が必要です。また、決済ごとに発生する手数料は、特に小規模クリニックにとっては重要なコスト要素となります。
決済手数料は、クレジットカード会社や決済システムの提供業者によって異なりますが、一般的に売上の2〜4%程度とされています。この手数料が積み重なると、年間の収益に影響を与える可能性があります。
手数料負担を抑えるために、一定の利用額を超えた場合にのみキャッシュレス決済を利用するよう患者さんに案内することも一つの方法です。
4-2 入金までにタイムラグがある
キャッシュレス決済を利用する際にもう一つの課題として挙げられるのが、入金までのタイムラグです。現金支払いであればその場で手元にお金が残りますが、クレジットカードや電子マネーの決済では、実際にクリニックの口座に入金されるまでに一定の日数がかかります。通常、決済日から数日~数週間程度の遅延が発生します。
特に、小規模なクリニックや開業間もないクリニックでは、毎月のキャッシュフローを重視している場合が多く、入金のタイムラグが問題となることがあります。
キャッシュレス決済を導入する際は、入金サイクルを事前に確認し、より早いタイミングで入金されるサービスを選ぶことも検討しましょう。
クリニックに最適なキャッシュレス決済サービスの選び方
クリニックでキャッシュレス決済を導入する際には、初期導入コストや手数料、対応する決済方法、入金サイクルなどを考慮して、最適な選択肢を検討すべきです。ここでは、クリニックにとって最適なキャッシュレス決済サービスを選ぶための基準について詳しく解説します。
5-1 キャッシュレス決済サービスは大きく2タイプある
キャッシュレス決済サービスは、クリニックで導入する際に大きく2つのタイプに分けられます。
一つ目は、決済端末を設置して、受付での会計時にキャッシュレス決済を利用できるタイプです。受付にクレジットカードリーダーやQRコードリーダーなどの決済端末を設置し、患者さんが診察後に対面で会計を行うことを目的とします。
二つ目は、診療予約システムや患者管理システムと連携し、あらかじめ患者さんが登録したクレジットカードやデビットカードを使用して自動的に決済を行う方式です。この方式は、オンライン診療や診察後の支払いを非対面で完了させることが可能で、クリニックと患者さんの間で会計業務をシンプルにします。患者さんは、事前にカード情報を登録しておくだけで、診療後に自動的に決済が完了し、メールやアプリで領収書を受け取ることができます。特に、オンライン診療を提供しているクリニックや、対面での会計を効率化したいクリニックにとっては、非常に有用なシステムです。
5-2 対応している決済方法の種類
クリニックでキャッシュレス決済を導入する際には、患者層に応じた決済方法を選定することが重要です。患者さんの年齢層や生活スタイルによって、好まれる支払い手段が異なるため、幅広いニーズに対応できるようにすることで、利便性を最大化できます。
例えば、クレジットカードやデビットカードを利用する患者さんが多い一方で、若年層にはQRコード決済が人気です。また、日常的に交通系ICカードを利用する人には、電子マネーも便利な選択肢となります。このように、さまざまな決済手段を導入することで、患者さんが自身に合った支払い方法を選択でき、支払いの煩わしさを軽減することが可能です。
複数のキャッシュレス決済方法に対応することで、幅広い患者層を取り込むことができ、結果としてクリニックのサービス向上につながります。また、患者さんが好きな支払い手段を選べることで、再診率向上や口コミでの集患効果も期待できるため、競争力の強化にも役立ちます。
クリニックで利用できるおすすめキャッシュレス決済サービス
クリニックでキャッシュレス決済を導入する際、どのサービスを選ぶかが重要です。多くの決済サービスが提供されている中で、医療機関向けに特化したものや、クリニックの運営改善につながるものを選ぶことで、業務効率化や患者さんの満足度向上につなげることができます。
ここでは、クリニックに適したおすすめのキャッシュレス決済サービスをいくつかご紹介します。
6-1 メディカル革命 byGMO
「メディカル革命 byGMO」は、クリニックの業務効率と売上の向上を実現する多彩な機能を搭載した診療予約システムです。キャッシュレス決済機能も利用可能で、予約管理機能と合わせて会計業務を効率化できます。患者さんが事前にクレジットカード情報を登録しておくことで、診療後に会計待ちをすることなく帰宅できるため、患者さんの待ち時間を削減し、クリニックでの会計業務の負担も軽減されます(※オプション機能です)。
専用のハード機器の導入は不要で、WEB上で簡単にキャッシュレス決済を導入できるため、初期コストを抑えられるのもポイントです。予約から診療、会計まで一連の流れをスムーズに管理できます。
6-2 stera pack for クリニック
「stera pack for クリニック」は、三井住友カードが提供する医療機関向けのキャッシュレス決済サービスです。本サービスの特徴は、1台の端末で多様な決済手段に対応している点です。クレジットカード、デビットカード、電子マネー、QRコード決済など、患者さんに幅広い支払い方法を提供できます。
「stera pack for クリニック」のメリットは、その使いやすさと高い機能性にあります。また、端末はコンパクトで操作も簡単なため、クリニックの受付業務をスムーズに進めることができます。さらに、最新の不正利用防止機能など高度なセキュリティ対策が施されており、安心して利用できます。
6-3 タイムズペイ for 医療業種
「タイムズペイ for 医療業種」は、タイムズが提供する医療機関向けのキャッシュレス決済サービスです。クレジットカードや電子マネー、QRコード決済など、多様なキャッシュレス決済に対応しています。
クリニックの受付に設置される専用の決済端末を利用し、簡単かつスムーズに会計処理を行えます。端末はコンパクトで設置スペースを取らず、操作もシンプルなため、スタッフの負担を軽減できます。さらに、初期費用や月額の固定費が不要で、取引ごとの手数料のみが発生するため、導入コストを抑えたいクリニックにとって魅力的な選択肢です。
6-4 日本医師会向けキャッシュレスサービス
「日本医師会向けキャッシュレスサービス」は、医師会会員向けに提供されるキャッシュレス決済サービスで、クリニックや病院などの医療機関が安心して利用できるよう設計されています。医療機関のニーズに応じたサポートが充実している点が大きな特徴です。
クレジットカードやデビットカード、電子マネーなど、幅広い決済手段に対応しており、患者さんが好む支払い方法を選択できる柔軟性があります。また、医療機関向けに手数料が抑えられているため、コストを意識した経営を行うクリニックにとって導入しやすいサービスになっています。
まとめ:キャッシュレス決済の導入でクリニック経営を改善しよう
キャッシュレス決済の導入は、クリニック経営において非常に大きな効果をもたらします。患者さんにとっては、支払い手段の選択肢が増え、会計の待ち時間が短縮されることで、利便性が大幅に向上します。また、クリニック側にとっても、会計業務の効率化やスタッフの負担軽減、現金管理の手間削減といったメリットがあり、運営全体の効率化につながります。
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