- サカモト
メディカル革命 byGMO(以下メディカル革命)導入の達人。
様々な病院や診療所のIT環境を知り尽くしているエキスパート。
- ミナコ
最近中途で入社した若手エンジニア。
医療IT分野を勉強中でサカモトさんに弟子入り。
こんにちは。GMO医療予約技術研究所の馬場です。
本シリーズでは、医療系エンジニアを目指す方向けに、複数回にわたって院内IT 環境について技術面から分かりやすくお伝えします。本シリーズを通して読むことで、エンジニアをはじめとした読者の皆様が、少しでも楽しみながらかかりつけ医に通っていただけると嬉しいです。
なお、本シリーズでは、基本的には大規模な病院ではなく、病床数の少ない、いわゆる小規模な診療所(クリニック)を対象とします。
- サカモト:
(埼玉での導入作業を終えて一旦オフィスに戻ったある日の午後)
- ミナコ:
あ、サカモトさん!ちょっと聞いてください!
この前医師の方と打ち合わせしたんですけれど、用語が分からないくて議事録が全然書けませんでした。レセコンって赤いロボットのことですか?
- サカモト:
それは〇ボコン...じゃなくてレセコンかぁ。確かにあんまり馴染みがないよねぇ。じゃ、これを機に医療分野ならではのIT機器について一緒に勉強しようか!
意外と知らないクリニックのIT機器
読者の皆様も当然一度はクリニックで診察を受けたことがあるはずです(なければ今すぐ弊社の予約システムを使って健康診断を予約してください!!)。
その時を思い出してほしいのですが、診察を受けて帰宅をするまでにどのようなIT機器があったでしょうか?もちろん診察を受けたクリニックによって設備は変わりますが、クリニックに行き、保険証や診察券を出し、診察を受け、料金を支払い、帰宅する、といった一般的な流れの中でいろいろな、かつ他では見ないような機器があったはずです。
本記事では、電子カルテを中心とした基幹システム、例えばMRIやレントゲンのような特定分野に特化した機器というよりは、もっと典型的な、しかしながら医療分野ならではの機器についてご紹介します。
ラベルプリンタ / リライトプリンタ
1つ目からややマニアックですが、クリニックが発行する診察券はいろいろな種類があります。
紙やテレフォンカードのように折り曲げられるPET タイプ、プラスチックタイプなどそもそも材質から異なりますし、記載されている内容もクリニックごとに異なりますが、多くの場合は、住所や電話番号、受付時間などクリニックの情報とともに、次回の予約日が記載されています。
ここで、次回予約日のような固定値ではない値をカードに印字する際に、リライトプリンタやラベルプリンタが活躍します。
リライトプリンタは対応した診察券であれば熱で直接印字でき、対応していない診察券であればラベルプリンタで印刷したラベルを貼ることで、リライトプリンタで直接印字するよりも手軽に次回予約日などの情報を診察券に書き込むことができます。
自動再来受付機/自動精算機
最近のクリニックでは、自動再来受付機(再来機)や自動精算機のように、時間がかかる受付や精算業務をIT機器で自動化している場合もあります。
クリニックに着いたら、再来機に診察券を挿入し、並ぶことなく自動的に受付をしたり、料金の精算も精算機でキャッシュレスで済ますことができたり、非対面で感染症感染のリスクを削減できたりと、患者にとってありがたいものとなります。
再来機については、再来機専用のハードウェアを導入する場合もありますが、ハードウェアとしてタッチパネルに対応した一般的なPCと診察券を読み取るためのQRコードリーダーを使い、再来機の機能はソフトウェアを使うことで、コストを抑えた実装をする場合もあります。
なお、弊社のメディカル革命も再来機の機能を持っていますので、手軽に再来受付業務の効率化を図ることが可能です。
スタッフ側のPC
受付スタッフ側でPCを操作していると思いますが、初診の受付対応、再来機が導入されていない場合の受付対応、電子カルテへの情報登録、会計処理など、受付側でPCを操作することも多くあります。
事務や看護師など、エンジニアではない人が操作するため、直感的な操作ができたり、そもそも操作が必要ないように自動化されているなどの工夫が喜ばれます。
呼び出しディスプレイ
診察券や保険証を受付に提出した後は、自分の診察のタイミングまで待合室で待っていることになりますが、クリニックの規模が少し大きくなったり、患者の名前を呼ぶべきではない、プライバシー配慮が極めて重要なクリニックでは、受付時に番号が発行され、順番が来たらディスプレイ上で自分の番号が呼び出されるような実装をしている場合があります。
この患者を呼び出しするためのディスプレイを、呼び出しシステムだったり呼び出しディスプレイと呼んだりします(正式名称はありません)。
弊社の主要製品であるメディカル革命の機能の中にも、Web上で稼働する呼び出しディスプレイの機能があります。一般的には、OS一体型のディスプレイは少なく、通常のディスプレイを呼び出しディスプレイとして使うことが多いです。
従って、このような呼び出し機能を投影するためには、PCからHDMI経由などで呼び出しディスプレイ機能を投影してあげる必要がありますが、配線や電源の位置関係上、ディスプレイに直接スティック型PCを差し込む場合もあります。
ただ、それでも電源が埋まっていたり、そもそもスティック型PC自体が排熱等の問題で耐久性がないため、地味にトラブルの元だったりしますので、実は意外と悩ましい部分です。次にクリニックに行くときは、院内ディスプレイの裏側の配線を気にしてみると面白いかもしれません。
電子カルテ
クリニックのIT機器を語るうえでなくてはならない超重要システムが電子カルテです。これだけで記事がいくつも書けるレベルなのでここで詳細に立ち入りませんが、電子カルテは従来紙で管理していた患者情報や診療記録を電子化したものです。
診察を受けているときに、医師がPCを見ながら、過去の診察歴などを参照したり、症状などをメモしたりしているのを見たことがあるかもしれませんが、それが電子カルテです。
この電子カルテ、実はなかなか厄介です。
電子カルテは患者情報を一元管理するための単一信頼元であり、雑な表現をすれば、ITエンジニアの世界で言うところのActive Directoryみたいなものです。Active Directoryとほかのシステムを連携して、例えばサーバーのログインシステムを構築したり、ユーザー情報を参照しながら他のシステムなどと連携したりするのと同様に、医療分野においては電子カルテの患者情報を参照しながら予約システムと連携し、どの患者が予約をして来院したのかなどを把握します。
ちなみに、ITシステムの世界におけるユーザー管理は従来オンプレで構築するActive Directoryが支配的でしたが、Microsoft Entra ID(旧Azure AD)やOktaのようなクラウドでのID管理も流行っています。電子カルテも同様で、オンプレ版とクラウド版があり、どちらも一長一短です。
医療情報を扱うという点でオンプレ版がまだまだ売れているものの、クラウドの勢いは見過ごせません。
電子カルテの場合、「電子カルテ シェア」などで検索いただくと分かりますが、日本には数多くの電子カルテメーカーが存在し、数多くの製品が存在し、そして数多くの仕様が存在します。
Active DirectoryとEntra IDの仕様の違いにエンジニアが悩まされるとの同じように、患者の単一信頼元である電子カルテの仕様が異なると、そのような電子カルテの情報を参照する予約システムのような他サービスとの連携が非常に大変です。
参考までに、弊社では50機種以上の連係実績がありますが、このような連携に対応しつつサポートもしていく大変さは、ITエンジニアの方であれば察することができるはずです。
このような仕様の違いに対応するための規格の統一に関する動きはあるものの、現時点としては多数の電子カルテシステムや仕様が存在するという事実は是非ご理解いただき、そして電子カルテ導入や電子カルテ連携に関わるエンジニアの苦労も理解いただけると嬉しいです。システムを導入するためにエンジニアがクリニックに伺い、電子カルテ連携に苦戦していてもどうか温かい目で見守ってください。
レセコン(レセプトコンピュータ)
電子カルテに並ぶ超重要システムですが、聞いたことがある人は案外少ないかもしれません。レセコンはレセプトの作成を自動化するシステムです。
レセプトとは、診療報酬明細書のことです。診療報酬とは、医療機関に対して支払われる保険診療に対する報酬のことです。我々医療行為を受ける側は支払う医療費と呼んだりしますが、お金を受け取るクリニック側は診療報酬と呼んでいます。
患者は一定の負担(例えば3割)で医療費を払いますが(これを一部負担金と呼びます)、残りの医療費(例えば7割)は国が負担する約束になっているので、医療行為や患者情報をもとに、レセプトを審査支払機関に毎月請求することで、診療報酬を受け取ることができます。
ちなみに、我々医療を受ける患者側からは、医療を提供する医療機関や保険料の支払先である保険組合などの保険者が見えていますが、登場人物としてはもう一人、レセプトを審査したり、保険者からの委託で医療機関への支払業務を行ったりする、いうなれば保険者と医療機関をつなぐ審査支払機関があります。要するに、医療機関が適切に診療報酬を受け取るまでには意外と苦労があるのです。
さて、皆様もクリニックで受け取った明細書の中に当日受けた医療行為に対して点数が記録されているのを見たことがあると思いますが、それこそが医療機関が受け取る診療報酬のベースとなります。そのような点数の決め方に関しては実は非常に複雑なルールがあり、しかも患者の年齢や所得によって負担金額も変わるため、診療報酬等請求を手動で、しかも毎月行うのは無理があります。
そのようなレセプトデータを作成して審査支払機関に送信するためのシステムがレセコンです。
やや込み入った話になってしまいましたが、レセコンはクリニックが正しく診療報酬を受け取るための経営にはなくてはならないシステムとご理解いただければ十分です。
まとめ
記念すべきシリーズ第1回目は院内IT機器についてご紹介しました。名前は聞いたことがあるものの、意外と知らなかったものも多かったのではないでしょうか?
次回はこれらのIT機器がどう繋がっているのか、院内ネットワーク構成を中心にお伝えします。
- サカモト:
- ミナコ:
サカモトさん、ありがとうございました!
おかげさまで用語の整理ができました!
- サカモト:
それは良かった。次は一緒に現地に導入作業に行ってみようか。
- ミナコ:
ところでまた分からない用語があったんですけれど・・・
IPアドレスってなんですか?
- サカモト:
・・・(そっとマスタリングTCP/IPを机に置く)